第7話 冒険者のパーティ
無事、ジニアを港町へと送り届けたエルスたち。
「ふぅー、帰ってきたぜ。さすがに歩き疲れちまった!」
「そうだねぇ。もう真っ暗だし、美味しいものでも食べて休みたいな」
すでに
ツリアンには街灯は無く、他の光源といえば、
「ふふー! 大食いなら任せるのだ! ご主人様の分まで、ミーが喰らい尽くしてやるのだー!」
「なんでだよッ!――っていうか、その呼び方はやめてくれェ……」
元気よく手を挙げるミーファに対し、エルスは大きな溜息をつく。
彼女は自身との激闘を制したエルスを「ご主人様」だと言い張り、そのまま
四人は昼間にも訪れた、町長親子が切り盛りする酒場へ入る。
テーブルに着くとすぐに、
「いらっしゃいませ!――まぁ、皆さん!? ジニアちゃんは無事に帰れたのね?」
「おうッ! バッチリ護衛してきたぜ! でも俺たちは
「なんだか物々しい感じだったねぇ。何があったんだろ?」
ジニアを見送ったあと――あの門番の男らに事情を尋ねたものの、バツが悪そうに頭を
「ふっふっふー! 悪の臭いがするのだ! 正義の勘が告げているのだー!」
「あら? 新しいお仲間さん? それにしても素敵な服ね……」
ロマニーはミーファの
黒と白を基調とした上質な生地で仕立てられ、可愛らしさと気品さが見事に両立されている。所々に施された
「ミーはご主人様に身も心もボロボロにされ、従順な
「なッ……!? おい、違うだろッ! いや、実はさ――」
エルスはロマニーに、街道での
その間にアリサたちは、注文を取りに来た別の店員に料理をオーダーした。昼間と違って夜は客も
ミーファは迷惑を掛けたことを詫び、状況を把握したロマニーは優しく微笑む。
そしてロマニーは丁寧にお辞儀をし、再び調理場へと戻っていった――。
「そういや、ニセル。なんで、ランベルトスには行かなかったんだ?」
「ああ、あそこは少々特殊でな。〝ギルド〟という組織が、街の政治も
「えっと、〝商人ギルド〟だったっけ? あとは……」
――アリサは口元に指を当て、考える仕草をする。
「あッ、〝盗賊ギルド〟と〝暗殺者ギルド〟かッ!――ってコトは、まさか……」
「ふっ。そういうことさ。あの街では、絶対に油断しないことだ。
「ふふー! 正義ならミーに任せるのだー! なんでも叩き潰すのだー!」
「いや……。なんかヤバそうだし、おとなしくしててくれよ? なッ……?」
勇ましく拳を振り上げるミーファを
エルスは彼女の頭を優しく
「わかったのだ! ご主人様の言うことは聞くのだ!」
「じゃあ、その『ご主人様』って呼び方を別のにさ……」
四人が談笑をしていると、やがて注文した料理が運ばれてきた。
名物の
「おおー! これは美味いのだ! 正義の味がするのだー!」
「この〝卵ソース〟をかけると美味しいよ? そういえばミーファちゃんって、どこかの家のメイドさんなの?」
「ふっふっふー! これは正体を隠すための変装なのだ! お城のメイドたちの服を、ミーのために強化させたのだ!」
ミーファはフォークを握ったまま、小さな胸を誇らしげに叩く――。
「へッ? おまえ、城に住んでたのか?」
「さすがご主人様! よく判ったのだ!」
「いや、さっき自分で言っただろ……」
「ほう。ということは、やはりミーファは
「おー! さすがはニセル、鋭いのだ! その通り、ミーは三番目の王女なのだ!」
そう言ってミーファは立ち上がり、優雅なお辞儀をしてみせる。
そしてすぐさま席に着き、再び大皿のカラアゲを
「王女って……。こんな所にいていいのかよ? 賞金稼ぎは冒険者の中でも、かなり危険な部類だしさ」
「問題にゃいのでゃ。ミーは正義のちゃめ立ち上がったにょだー」
「ミーファちゃんすごいなぁ。わたしも、立ち上がってみようかな?」
「アリサ、おまえは真似しなくていいから――。ッつか、行儀悪ィから座ってろよ!」
「ふっ。賑やかになったな」
ニセルは口元を緩め、ゆっくりとグラスを傾ける。
彼はエルスたちより一回り年長の、熟練の冒険者だ。
やがて賑やかな
ニセルとミーファは一人部屋を、エルスとアリサは二人部屋を用意してもらった。
共に親を失い、幼い頃から一緒に育てられた二人は、いつも同じ部屋に居るのが当たり前となっている。少し広めの室内には大きな窓があり、両端の壁際には、ベッドが一台ずつ設置されていた。
「チクショウ。ミーファのヤツ、本当に俺の分まで食いやがった……」
「
「ミーファって見た目は小せェけど、おまえより二つも年上だろうよ」
エルスは剣や
アリサは防具を丁寧に並べ、赤いリボンを解いて髪を
「まッ、いいよ。なんとかなるからさ!」
「そっか。でも、ちょっと前まで二人きりだったのに、急に賑やかになったねぇ」
「だなぁ。父さんたちも六人でパーティを組んでたし、俺らも仲間と世界中を旅できるように頑張ろうぜ!」
「うん。そうだね。それじゃ、そろそろ寝よっか」
「おうッ! おやすみ、アリサ」
「おやすみ、エルス」
二人は就寝の挨拶を交わし、それぞれのベッドに
カーテンの隙間からは
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