第4話 近道の遭遇戦
「ここの魔物は強くはないが、
「はっ、はいっ! ありがとうです……! ニセルさん……」
「もし途中で〝霧〟が出たら、魔法には気をつけてなッ!
ニセルに続き、得意げに注意を
「そんな馬鹿やる人いないわよっ! 誰でも知ってる〝常識〟だし!」
「まッ……、まぁ……。だよなッ……!」
ジニアの言葉に苦笑いを浮かべ、エルスが後頭部を
林道というほどではないものの、ここを通った者たちのおかげで、しっかりと地面は踏みならされている。道を進んだ
その雰囲気から〝魔物〟の襲撃を警戒し、エルスが剣に手をかける。彼がアリサの方を見ると、彼女も小さく
「グルルルゥ……!」
「へッ! やっぱり出てきやがったなッ!」
異形の獣が放つ声――。獲物の気配を察知したのか、木々の間からは続々と、〝イヌ〟の頭をした人型の魔物が飛び出してきた。それらの手には、エルスが所持している物と同じ
「ふっ、ハイコボルドだな。――エルス、気をつけろ。まだ
ニセルは自身の左耳を指でさす。彼の耳は〝特別製〟だ。
そして彼の言葉の直後、今度はハイコボルドの足元を
「あっ、この前の。かわいいよねぇ」
「ええっ……!? アリサちゃん、
「よしッ、あの〝クモ〟は俺が魔法でッ! アリサとニセルは〝イヌ〟を頼む! ジニアは俺たちの後ろにいてくれよな!」
魔物の姿を確認し、エルスが手早く仲間たちに指示を出す。
「わかったっ!」
「ああ、任せておけ」
「そんじゃ行くぜッ! 戦闘開始ィ――!」
*
まずはアリサが、ハイコボルドの群れへと飛び込んでゆく。対する魔物たちは連続で武器を振り下ろすも、彼女は
「はぁっ! てやぁ――っ!」
手にした剣ごと
そしてニセルは魔物の攻撃を軽々と
「はぁぁ……。すごいわね、二人とも……」
冒険者たちの戦いぶりに、ジニアが思わず声を
「コイツら、前は〝火〟で倒したッけ? まあいいや、ここは〝風〟でッ!」
エルスはクモ型の魔物〝ヒュージスパイダー〟に対し、呪文を唱えて解き放つ。
「ヴィスト――ッ!」
風の精霊魔法・ヴィストが発動し、エルスの
「うおッ!? ダメかッ」
エルスが驚きの声を上げると同時に、
「エルス、
ニセルの声に反応し、エルスが
「ちょっと! 当たったらどうすんのよっ!?」
「
エルスは謝罪を述べながら、ジニアから離れた位置へと移動する。風の魔法が効かない以上、他の手を打たなければならないが、林の中での〝炎〟はリスクが高い。
「なら、凍らせてやるぜッ! ミュゼル――ッ!」
水の精霊魔法・ミュゼルが発動し、エルスの頭上に複数の
やがて氷漬けの魔物は砕け散り、その
そして、エルスが今の魔物を片づけたと同時に、魔物の気配も消失した。
*
「ふぅ、なんとかなったぜッ! みんな、無事か?」
「うんっ。エルスは大丈夫?」
アリサの問いに対し、エルスが親指を立ててみせる。
「はぁ……。こっちは
「へッ……? ああ、俺も〝母さん〟のことはよくわからねェんだ! ガキの頃に、父さんは〝魔王〟に殺されちまったしな!」
「え、魔王ですって……? ふぅん……。あなたも結構、苦労してるのね。少し見くびってたわ。ごめんなさい」
風と水。二つの
ジニアは小さく頭を下げ、エルスに謝罪の意思を示す。
「そんなこと気にしねェでくれよ! それより、早くここを抜けちまおうぜッ!」
「ああ。ここを
ニセルが木々の
*
「あっ。抜けたね。――それに、なんか空気が違う感じ」
林を抜けた四人の目の前に、再び〝街道〟が現れる。しかし、ツリアンの
「海の
街道の上を進みつつ、ジニアが右手で頭を抱える。彼女は〝
「よし、いよいよ本番だなッ! なんとか説得できりゃいいんだけどなぁ」
「無駄よ! とにかく
「ん? 見た目?」
エルスは首を
すると彼女は真っ直ぐに、前方を人差し指でさしてみせた――。
幅広い街道の中央に、小さな少女が立っている。
どうやら彼女は〝ドワーフ族〟であるようだ。
彼女は金色の長い髪を白いリボンでツインテールに
「えっ? あの子がヘンな人?」
アリサは口元に指を当てる。見たところ、彼女は〝斧〟どころか、武器らしき物を所持しているようには見えない。少女もこちらに気づいたらしく、彼女は冒険バッグから〝紙束〟を取り出し、熱心に何かを見比べているようだ。
「来たなー! いつもの悪いヤツ! 仲間が増えても無駄なのだー!」
「だからっ! 私は何もしてないってば! いいかげんに理解してよっ!」
「悪い奴の話は、信じないのだ!」
まさに〝取り付く島もない〟といった状態か。
そんな敵意をむき出しの少女に対し、エルスが対話を試みる。
「なあ……。俺たち、そこの〝港町〟に入りてェだけなんだ。通してくれねェか?」
「悪いヤツの言葉など、まったく信用ならぬのだ! さっそくやっつけるのだー!」
少女は後ろへ軽くステップし、そこで大きく右手を振る。すると彼女の手に、
「んげッ!? どこから出したんだよッ!? やっぱ、やるしかねェのか……?」
「だから言ったでしょ! この人、何を言ってもこんな調子なんだもの!」
「
相手が先に武器を抜いた以上、もはや応戦せざるを得ない。
エルスたちも剣を抜き、少女に対して身構える。
「ふっふー! 悪人どもが
少女は身の丈以上もある〝巨大な斧〟を軽々と振り回し、戦闘の構えをとった。
「正義の賞金稼ぎ・ミーファ! いざ、悪人どもを
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