第26話 深く刻まれしもの
すべての料理を平らげた
一般的に宿屋は、一階が簡易的な食堂や酒場、二階が客室という構造となっている場合が多い。この宿も例に
「はぁぁぁ……。疲れたぜェ……」
部屋に入るなり、エルスは安物のベッドに腹から飛び込む。
そんな彼の顔面を、硬いベッドが強く押し返した。
「たくさん頑張ったもんね。お疲れさま」
アリサはヒビ割れや
「んー、頑張ったけどさ。よく考えたら俺、何の成果もあげてねェんじゃないかなッて……」
エルスは横になったまま器用に剣や防具を外し、乱雑に床へと投げ落とす。
今朝からの出来事を思い返してみると、自分で
「遺跡の騒ぎも、結局はロイマンやラァテルが解決しちまッたし。もしかすると俺のせいであんなことになったかもッて思うとなぁ……」
「エルスって、意外と真面目だもんね」
「へッ。――そういや、あのジイさんとアイツ。どうしたんだろうな? リリィナと会った時には、もう見かけなかったけどよ」
「わたしも見てないなぁ。カルミドさんと団長さん、なにかあったみたいだったね」
エルスは天井を見つめたまま、深く長い息を吐く。
「だろうなぁ。なんか
「えっ? うん、大丈夫だよ……。エルスもいるし、大丈夫……」
「なら良いけどよッ。はぁ、『近くにいれば、守れるッてワケじゃない』か……」
「エルス……?」
昼間のロイマンとのやり取りにおいて、エルスはあまりにも近くに居すぎたアリサのことを、〝仲間〟ではなく〝都合のいい存在〟だと思いあがっていた。
そんな自らの愚かさに気づかされただけでも、彼にとっては、大きな意味のある一日となっただろう。
「いや、何でもねェよ。疲れたし、そろそろ寝ておこうぜ!」
エルスは冒険バッグから虹色のビンを出し、
ついでに幼少時から大切に持っている〝ペンダント〟を取り出し、
裏面には神聖文字の
「……精霊か……」
エルスはペンダントを眺めたまま、そう小さく
「……エルス……」
「うわッ!? 急になんだよ……?」
不意に近くで聞こえたアリサの声に、エルスが驚いて振り向くと――。
髪を下ろし、ボサボサのロングヘアとなった彼女が
アリサの幼さを感じる容姿も相まって、心なしか泣いているようにも感じられる。
「そっちに行っていい?」
「良いも悪いも、もう居るじゃねェか。……別にいいけどよ」
「ありがと」
小さな声で言い、アリサは
「よしッ。明日は自警団の本部に行かねェとだし、早く寝ようぜ」
「うん。エルス、おやすみ……」
「おやすみ、アリサ」
テーブルの上ではルナの
その光から目を
疲れていたのか、アリサは早くも
エルスはそんな彼女の頭を、そっと優しく
「もし、アレを使えば……。今度はアリサまで……」
エルスは不吉な予感を振り払うように、固く、強く目を閉じる。
そして彼も、やがて深い眠りへと
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