第25話 特別たる者の責任
エルスの目の前に出された物――。
リリィナが持つ
「この街に着いた時にね? 面白い物を見つけたから買っておいたの」
目の前のアイテムを嫌悪するように目を
「なぁに? これ。キラキラしてて、きれいだね」
「……俺が必死に店番を頑張ってた
「ええ、
予想通りの回答に、エルスは右手で顔を
アイテムの価値もさることながら――。
「そんなモン、わざわざ買ってこなくても……」
「精霊石を粉末にできるなんて、広く知れたら大変なことになるわ。エルス。それを作ったあなたが、責任を持って処理しなさい」
リリィナは
「わかったよ……、相変わらず
「向こうが付けた価格よりも、多めに支払っておいたから大丈夫よ。下手に払いが良すぎると、
「これって、そんなに危ないの? お姉ちゃん」
首を
「……ええ、とっても。過去には、それと似たようなモノが原因で起こった戦争なんてものもあったわ……」
「
「そういうワケだから。早くそれを
フードから
間もなくしてリリィナの注文を取るために、店の者がテーブルへ近づいてきた。
「ランベルベリーアイスを三つ。お願いね」
リリィナは先ほどとは別人のような笑顔になり、明るい口調で注文をする。
これ以上、この話題を続けるのは危険だ。危機を察したエルスは店員が立ち去ったのを確認し、さりげなく話題を変えた。
「そういやリリィナってさ、ラァテルのヤツとどういう関係なんだ?」
「ラァテル……。あの子はルツィア――私の妹の
「へッ? じゃあアイツ、リリィナの家族なのか……。そういやぁ、なんとなく似てなくも……」
金髪こそ同じであるものの、ラァテルの青白い肌に真紅の瞳。そして常に殺気を帯びたかのような鋭い目つきは、他人を拒み、遠ざけるかのようだ。
対して、こういった
「んー……。似てるといえば似てるし、似てねェといえば似てねェな……」
「うーん。
「そうだよな。オバサンだもんなぁ」
エルスは妙に納得したように、何度も「うんうん」と
「……まぁ良いわ。私は、あの子を守らないと。絶対にね……」
「守るッていっても、アイツかなり強ぇぞ? しかも
「そう……。あの子は、まだ運命に
リリィナは物思いに
その間、再度近づいてきた店員がテーブルに三つのアイスを置き、一礼の後に去っていった。
「ッていうか、アイツらは王都の方へ行ったらしいぞ。追いかけなくていいのか?」
「ええ。ただ近くにいれば守れるワケじゃないから。私は、私にできることをするつもりよ」
「なんだか大人っぽくていいなぁ。でも、わたしは近くに居てほしいかも」
そう言って口元に指を当てるアリサに、リリィナは優しく
「ふふっ、そうね。あなたたちは、その方が良いと思うわ。エルス、アリサ。これからも仲良くね?」
「なッ……。急になんだよ……?」
その問いには答えず、リリィナは自身のアイスを二人の中央に
自然とエルスとアリサの視線が、同時に
「頑張った二人に〝ご
「ありがとう、お姉ちゃんっ」
「もう行くのか? なんか色々と、ありがとなッ!」
「ええ、また会いましょう。二人とも」
リリィナは上品に手を振り、
同時に周囲の
「なんだかすごい話だったけど、こんな所で話して大丈夫だったのかなぁ」
アリサの言うとおり、それほど広くはない空間には、本日の成果を
「たぶん平気だと思うぜ。そこにあったリリィナの杖――アレから、
「そうなんだ? よく気づいたね」
「今日は朝から、何回も見たからなぁ。なんとなく、だなッ!」
「そっか。――ねぇ、エルス。せっかくだし、これ、半分ずつ食べよっか」
アリサはリリィナがくれた、一皿のランベルベリーアイスを
「ん? ああ、おまえ食っていいぞ。ここに一個ずつあるし」
「せっかくお姉ちゃんがくれたから、一口だけでも。はい、〝あーん〟して?」
「なんだよ〝あーん〟ッて。まったく、おまえら二人が
エルスは嫌々ながらも、差し出されたスプーンを口にする。
「――お、
冷たいランベルベリーの甘酸っぱさと
「よかった。じゃ、残りは貰っちゃうね?」
「ああ、しっかり食っとけッ!」
はじめての大きな依頼を、無事に終えた二人。
今夜はゆっくりと勝利の
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