第11話 ファスティアの守護者
アリサとカダンの後を追い、ファスティアの街へと出たエルス。
酒場の外では二人の他に もう一人、魔術士らしき男が待機していた。
「あっ、エルス。こっちこっち」
「待たせちまッて、すまねェな!」
「改めて、ご協力感謝いたします。エルス殿!」
すでに住民らの避難は完了しており、あれほど
「よし、ザイン! 行けるか?」
自警団長カダンは魔術士の男・ザインに準備の確認をする。よく見るとザインが着ている
「はい、団長。しかし、これで風の
「問題ない! 彼らはロイマン殿が
「かしこまりました」
ザインは丁寧な口調で了承し、
「……なぁ、行かねェのか?」
「おおっと! 動いてはなりませぬ、エルス殿! 彼の周囲からは離れぬように」
「集中力が大事なんだって。エルス、静かにしよう?」
そうアリサから指摘され、エルスは少し口を曲げる。
そんな彼らが見守っていると、やがてザインの握りしめている
「風の精霊よ、我に力を示し
風の精霊魔法・マフレイトが発動し、ザインの周囲に半球状をした風の結界が展開される。結界はエルスたち四人を
「うおおおッ! すげェー!」
「すごく速いねぇ。あっ、エルス。黙って黙って」
「悪ィ……ッて、何で俺だけなんだよッ!」
「ハッハッハ! ザインは優秀な魔術士ゆえ、話すくらいならば大丈夫ですよ!」
カダンは豪快に笑いながら、誇らしげに自身の胸を叩いた。
「すげェなー、これ! あっという間に、街の外だぜ!」
結界の中は足元の安定感こそ無いものの、風圧を感じることもなく立っていられる。制御に集中し続ける術者以外には、なかなかに快適な移動手段のようだ。
「ほらエルス、
「……いや、期待されても絶対に落ちねえぞ?」
「うん。エルスがいなくなっちゃうと、さみしいもんね」
「ハハッ! お
風の結界に乗り、
――だが、今朝エルスたちが魔物狩りをしていた荒地まで差しかかると、周囲の光景にも、目に見えて変化が表れはじめた。
あたり一面を、異常な数の魔物たちが
「こんな数が現れるなんて……。どうなってんだ?」
「魔物どもは
「なるほど……。団長があんなに必死だったわけだ」
エルスは空を見上げる。すでに天上の
「団長さん。いっそ王都にも、助けを求めたほうがいいんじゃないですか?」
「ええ……。もし王都への最終防衛線に魔物どもが
王国騎士団の強さを熱く語るカダンだが、次第に
「しかし可能な限り、ファスティアだけの力で対処したいのです。もし王都の兵を動かしてしまうような事態になれば……」
「……どッ、どうなるんだ?」
緊張した
そしてカダンは
「おそらくファスティアの自治権は
「それは確かに深刻だなッ……。んー、俺は神殿騎士が増えるのが一番ヤダなぁ」
「王都には、たくさん居たもんね。でも、そんなに怖くないと思うんだけどなぁ」
「なんかアイツらッて不気味なんだよなぁ。鎧に兜でガッチガチで、みんな同じ奴に見えるしさ……」
そう言ってエルスは
「ええ、わかりますとも! 自分も幼き頃は、彼らの出で立ちに恐怖心を覚えた記憶がありますな!」
「――団長。まもなく到着します」
ザインは
「……これが、はじまりの遺跡か……」
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