王都アヴァロニアに潜む闇

「イーストエンドで冒険者が行方不明になった?」

 アヴァロニア王国宰相、ギネヴィア・ホークウィンドは配下からの報告を聞いて拳を握りしめた。

「誘拐犯は人質を返してほしければ馬車一台分の金貨を要求しているそうです」

 配下は淡々と事態を報告した。しかし、その表情にはギネヴィアへの恐れがあった。

「シーワーラットめ……貴族出身の冒険者を誘拐して小銭稼ぎとはよく考えたものだ」

「ギネヴィア様、どうしますか?」

「どうするも何もシーワーラット風情にくれてやる金貨など一枚もないさ、冒険者ギルドに通達しろ。シーワーラットのメンバーをすべて生け捕りにしろとな」

 ギネヴィアの瞳には熱い炎を宿していた。


◆◆◆◆◆


「ドクター・レッドランド、コールドスティールがいないがまたお得意の独断専行か?」

「……ホワイトアウト、再臨計画の成功には不確定要素を排さなければならない。私は確実に再臨を成功させたいだけだ」

「御高説はありがたいが残念なお知らせがある……総長は再臨計画の進行を当面延期することになった」

「延期だと……急に延期を言い出すとは何か問題があったのか?」

「六王機関のことを嗅ぎ回るネズミがウロチョロしてるし、王都アヴァロニアがとても騒がしい。総長は総合的に判断して延期を決定した」

「……そうか。わざわざそんなことを報告しにやってきてくれて感謝するよ」

 ドクター・レッドランドはホワイトアウトに皮肉めいた視線を向けた。

「ドクター・レッドランド、くれぐれも変な気を起こすなよ?」

「……わかっている。しばらくは大人しくしているよ」

 二人の六王機関の幹部は真意を悟られないように無表情だった。


◆◆◆◆◆


 六王機関、シーワーラット、八本足。アヴァロニアに潜む闇は深く暗い。


 

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パーティを追い出されたけど魔王のお姉ちゃん達が使い魔になりました 夏川冬道 @orangesodafloat

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