第11話 絵馬

今回が最終回になります。


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私と阿藤が知り合いどころか高校の同級生で親友であることを、アキラは知っていたのである。


バラしたのはもちろんアトリボ(阿藤里穂)である。


手をつなぐイベント以降、アトリボは急速にアキラに好意を寄せるようになった。アキラは気づいてなかったが、アトリボは手をつなぐようになってから、会うたびにドンドン恋に落ちていったのである。プロポーズがあればOKすると決めてたそうだ。



私の名前が出てきたのはアキラが研究室のことを話した時だった。研修室のメンバーでただ1人の女子学生が私だったからだ。アキラは私の名前を出さなかったが、アトリボは気になるらしく、根掘り葉掘り聞いてきた。私の容姿やどんな人物かを話しているうち、アキラが「みゆきが-」とつい口に出してしまったのだ。アトリボはほぼわかっていたが、それでその女子学生が私に間違いないと確信したのだという。



「その子、私の高校時代の同級生。親友だよ?」嬉しそうにアトリボがそう言ったそうだ。で、その後は堰を切ったように私の高校時代のことをいろいろとしゃべりまくったらしい。


アキラをびっくりさせたのは、私とルミの関係をアトリボがバラしたときだ。私のファーストキスの相手がルミだってことを。その話を聞いたアキラは、私へのモヤモヤした想いがスッキリ晴れたという。つまり私はレズビアンだと思われたのだ。まあ、当たらずとも遠からずだ。そう思いたければそれでもいい。私がルミを好きだってこともキスしたってことも事実だからね。


実はアトリボも私をレズビアンだと思ってたらしく、研究室のメンバーの女子学生が

私だと知って安心したというのだ。私の初恋のヒトは担任の伊原先生(男性教師)なのだが、このことはアトリボにも誰にも話していないのでそう思われても仕方ない。正確に言うと私はバイセクシャルなのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。




私とアキラと阿藤の3人でファミレスに行き、ドリンクバーのコーラで乾杯した。


「婚約おめでとう」私はグラスを上げて乾杯した。

「ありがとな。みゆきのおかげだよ」アキラはほんとにいいヤツだ。

「ありがとう。みゆき。なんかいろいろお世話になったみたいで」

「お世話したよー。アキラくんはホント、ボクネンジンだからね」


私は笑った。


「ボクネンジンて、なんだよ?」

「さあ、あとで調べてみれば? 私もよく知らないんだ」

「なんだよ? ソレ?」


アキラが笑った。


「みゆきが縁結びしてくれたなんて。持つべきものは親友よね」

「私はただアキラくんの相談に乗っただけ。お見合いしたのは2人でしょう?」

「まあね。イマドキお見合いなんて。しかもこのトシでなんて思ったが」

「わたし、シアワセ。お見合いって、ステキだわ」


阿藤がアキラを見て嬉しそうに笑った。


その日は3人で盛り上がっていろんな話をした。


でも、アキラもアトリボも、「みゆきもお見合いしてみれば?」とは言わなかった。2人とも私がレズビアンだと思ってるからだろう。女同士のお見合いは変だものね。でも、2人を見ていて、私もステキな男性となら、お見合いしてみたいなと思った。



その後、アキラと2人で話す機会があった。私はひとつだけ忠告しておいた。


それは、

『釣った魚だと思ってエサをやらずにいると逃げ出してしまうかもよ』

ってこと。


2人は婚約したけどまだ結婚式を挙げたワケじゃない。仮に結婚しても離婚だってありうる。もちろん婚約してラブラブな2人に離婚の可能性まで口にしたりはしなかったが。


今後も今まで以上に阿藤里穂をマメに愛してあげて欲しいってことを言っただけだ。アキラが「手を抜いて」ほっておくとアトリボは嫌われたんじゃないかと悩むだろう。アトリボは高校生のときからそうだが、見栄っ張りだが臆病で心配性なのだ。




私は近くの神社でいい人に出会えるようしっかりお願いしてからおみくじをひいた。


   【 恋愛 : 時を待て。良い人に出会う 】

   【 縁談 : 進めてよし。倖せになれる 】


私の前にあらわれる「良い人」って誰だろう?ひょっとして私にも彼氏ができるのかな。まさかね。毎日早朝から深夜まで実験漬けの私に彼氏ができようはずがない。


しかし、神様のお告げである。本当に私にも彼氏ができるかもしれないではないか。


ハート型のピンクの絵馬に『運命の人に出会えますように♡』と書いてつるした。となりに同じハート型の絵馬に見慣れた文字が書いてあるのが目に付いた。


これからもずっと仲良く ♥ 幸せな家庭を築けますように。 Akira & Riho


なんだ。私より先に、2人そろってここに来てたのか。くう。ヤケルね。


自分の絵馬をもう一度確認して立ち去ろうとしたとき、サワサワと風が吹いた。絵馬がカラカラと音を立てて揺れた。それが私への神様の答えのように聞こえた。






おわり。




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【登場人物】


私(みゆき)

菊池アキラ

阿藤里穂(アトリボ)

藤堂タケシ


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【 アキラの相談 】 全11回


第1回  白羽の矢

第2回  メモ

第3回  朴念仁

第4回  清楚系

第5回  万古不易

第6回  二股

第7回  距離

第8回  乾杯

第9回  試金石

第10回 ミッション

第11回 絵馬



最後まで読んでいただきありがとうございました。



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アキラの相談(全11回) 黒っぽい猫 @udontao123

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