男:女 = 0:2
高校生ちゃん空を飛ぶ【0:2 30分】
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https://kakuyomu.jp/works/16817139555946031744/episodes/16817139555946036386
【概要】
有給休暇をとったある朝、カーテンを開けたら、見知らぬ女の子がベランダで掃除機を抱えてた。
使命感を胸に空を飛ぶ高校生ちゃんと、空を飛べない「あたし」の話。
【登場人物】
◇あたし
35歳のコールセンター管理者。かつてコギャルだった一般人。青森県出身、神奈川県在住。
地の文とセリフの読み分けあり。
カギカッコ内がセリフ。そうでないのがモノローグ。
●高校生ちゃん
早生まれの15歳。静岡県在住。どちらかといえば人見知りで気が小さい。掃除機にのって空をとび、天候に潜む「悪意」を吸い取る才能がある。
原作:「高校生ちゃん空を飛ぶ」
https://kakuyomu.jp/works/16816452218258555259
<以下本文>
◇あたし
カーテンを開けても大丈夫。
そういう立地が気に入って借りた物理的にも金銭的にもちょっとお高めのマンションだから、あたしは朝イチで勢いよくカーテンを開ける。
2月になって、観測史上
晴天、眺望よし。素晴らしい有給休暇の始まりなはずだったけれど今日に限っては悲鳴が出た。
ベランダに誰かがいれば当然の反応でしょう。
そこにいたのが、たとえ女子中学生だったとしても。
「はーーーーー!? ちょっと誰!? あんた何してんの!?」
●高校生ちゃん
(二月のベランダで寒い)
「すみませんすみません! わざとじゃないんです! 少ししたら出ていきますから、ちょっとだけ休ませてください!」
◇あたし
「け、警察! あっと、スマホで110番どうやるんだっけ!?」
●高校生ちゃん
「確か、普通にイチイチゼロ押すんだと思います」
◇あたし
「そっか、ありがとう!」
「……いや、まって。なんであたしが真冬のベランダで子供相手にビビり散らかさなきゃなんないの?」
●高校生ちゃん
「なんか……すみません」
◇あたし
「(ぶつぶつ言う)え、これ、ずっとベランダに閉め出してたら、児童虐待的なことになる? でも中にいれたら誘拐になっちゃう? いや最初からあたしの家にいたわけだし、向こうから来たわけだし、いや、でも……(高校生ちゃんに)あー、もう。ほら、寒いでしょ、入んなよ」
0:転換。室内
●高校生ちゃん
「お、おじゃまします……すみません……」
◇あたし
「スマホで110番、意外とわかんなくなるもんだね」
●高校生ちゃん
「すみません……」
◇あたし
「世の中何があるかわかんないし、練習しとくといいと思う」
●高校生ちゃん
「その……わかりました」
◇あたし
「ねえ、すごい疑問なんだけど」
●高校生ちゃん
「はい」
◇あたし
「なんで、掃除機持ってんの?」
●高校生ちゃん
「すみません……」
◇あたし
「いや、謝ってほしいわけじゃないんだけど……コーヒー飲める?」
●高校生ちゃん
「すみません……苦いのは、ちょっと」
◇あたし
「だと思った。紅茶? 緑茶?」
●高校生ちゃん
「こ、紅茶……すみません」
◇あたし
「砂糖とミルクは?」
●高校生ちゃん
「両方で……」
◇あたし
「はいはい。ちょっと待っててね」
●高校生ちゃん
「あの……わたし、すぐ出ていきます。ごめんなさい」
◇あたし
「そりゃあ、そうしてもらうつもりなんだけどさ。その前に、どうやってベランダ入ったの? ここ七階なんだけど? なんかこう、簡単に入れるルートというか、セキュリティの甘さみたいのあんの?」
●高校生ちゃん
「それは、その……ごめんなさい」
◇あたし
「だから、そんな謝んなくていいんだよ。そういう抜け道みたいのあるなら、管理会社に言っておきたくて。だから、質問にはなるべく答えてもらえる? 寒そうだったから中に入れたし、お茶の一杯ぐらいは出すけど、あんたは──(犯罪者だ、と言いかけてやめる)」
「──ともかく、あたしの家のベランダに勝手に入った。事情ぐらいは聞かせてくれてもいいんじゃないの? 今日水曜だけど、学校は?」
●高校生ちゃん
「……仮病で休みました」
◇あたし
「ごめん学校サボって不法侵入ってなに? ほかにやることないの?」
●高校生ちゃん
「来たくて、来たわけじゃ、ないです」
◇あたし
「あんたさあ──もしかして、誰かから逃げてたりする?」
●高校生ちゃん
「あ。えっと(スマホに着信して、出ていいのか迷って、しどろもどろ)」
◇あたし
「警察とか、児童相談所とか、もしアレなら手伝う?」
●高校生ちゃん
「あ、いえ、違うんです。スマホに着信してて」
◇あたし
「ああ、なんだ……親御さん?」
●高校生ちゃん
「ち、違います。えっと、バイト先……」
◇あたし
「バイトだ? まあとにかく出なよ。マグはそこ、ローテーブルにでも置いちゃってさ」
●高校生ちゃん
「すみません。(通話を受ける)あの、もしもし? ──はい、すみません。掃除機の調子が悪くて、いちど降りちゃって。まだいけるはずなんで。はい。すぐ行きます。はい。わかってます。すみません。でも、他に掃除機なくて、その――はい。ちゃんとやります。はい。はい。ごめんなさい。頑張ります(通話終了)。あの、わたし、もう行かなくちゃいけなくて。お茶、ごちそうさまでした。残しちゃってごめんなさい」
◇あたし
「ああ、それはいいけどさ。あんた、中学生で学校休んでバイトしてんの?」
●高校生ちゃん
「わたし高校一年です」
◇あたし
「なんだ、高校生ちゃんなんだ。……いやいやどっちにしてもだよ。学校休んでバイトしなきゃならないって、よっぽどじゃない」
●高校生ちゃん
「でも、わたしがやらなきゃいけないんです」
◇あたし
「わかんないけど、保護とか、補助とか、調べればそういうのもあるって」
●高校生ちゃん
「わたしがやりたくてやってることです。あなたには関係ありません」
◇あたし
「そりゃ他人だけどもね」
●高校生ちゃん
「とにかく、貧乏とか、不良とか、お姉さんが想像するのとは違うんです。人の命に関わったりもするんです。ベランダに降りちゃったのは、ごめんなさい。どうやったのかは、話しても信じてくれないと思うんですけど……」
◇あたし
「なに、空でも飛んできたの?」
●高校生ちゃん
「それです」
◇あたし
「あ、そうなんだ。そんなわけあるかい!」
●高校生ちゃん
「その……本当にそうなんですよ。今から見てもらうことになります」
◇あたし
「なるほど? ベランダに出て? 掃除機の本体にまたがったね。電源いる? コンセント貸そうか?」
●高校生ちゃん
「コンセントいりません。行きますね。せーの!」
◇あたし
「……はあああああぁぁぁ!? ちょ待って。浮いてる。あんた浮いてるよ! 大丈夫なの!? や、まってベランダの外出てる! 危ないって!」
●高校生ちゃん
「できれば内緒にしてください。ネットに上げても丸山さんが消しちゃいますけど」
◇あたし
「誰だよ丸山しらねぇよ!」
●高校生ちゃん
「中に入れてくれて、お茶もいれてくれて、ありがとうございました。嬉しかったです。もう会うことはないと思うんですけど、お元気で!」
◇あたし
「上がっていく……」
●高校生ちゃん
「(落ちていく)きゃあ!」
◇あたし
「落ちた! うそ! まだ落ちてない! ちょっと、上がれる!? ほら、がんばって! 手に掴まって!」
●高校生ちゃん
「お姉さん、危ないです、危ないですから!」
◇あたし
「うるさい危ないのはあんただチビっ子! 掃除機、変な音してる! この……! それ、掴まえ、たっ!」
●高校生ちゃん
「わわ、うわぁ!」
◇あたし
あたしは高校生ちゃんのダッフルコートをひっつかんで、倒れ込むようにベランダに引っ張り込んだ。
高校生ちゃんの頭から、ありふれたシャンプーの匂いがした。
0:転換。室内
●高校生ちゃん
「あの、ほんとに、ほんとうに、ごめんなさい……」
◇あたし
「だから別にいいってば。それにしても『もう会うことはないと思うんですけど』から5秒で再会したね」
●高校生ちゃん
「……」
◇あたし
「ごめん。今の意地悪だった。ともかく、お茶の残り飲んじゃいなよ。冷めちゃっただろうけどさ」
●高校生ちゃん
「はい」
◇あたし
「この目でみちゃったからもう、掃除機で空を飛んだのは受け入れるしかないんだけど、でもそれにしたって、その掃除機使うの危なすぎだよ」
●高校生ちゃん
「調子はそこそこ悪かったんですけど、ここまでは、割と順調に来てたんです。急にふらついて不時着しましたけど、それでも機体を休ませればまた行けると思ったんです」
◇あたし
「でももう、ウンともスンとも言わない感じだね」
●高校生ちゃん
「はい」
0:間
◇あたし
「ともかくさ、さっきのバイト先、そこに連絡して、ダメそうだって相談した方がいいんじゃないかな」
●高校生ちゃん
「でも、掃除機これしかなくて」
◇あたし
「そうはいっても、バイトの道具でしょ? わざと壊したわけでもあるまいし、バイト先から別のを支給してもらえばいいって」
●高校生ちゃん
「これ、私物です」
◇あたし
「は?」
●高校生ちゃん
「お年玉ためてて、中古の安いの買ったんです」
◇あたし
「その、バイトのために?」
●高校生ちゃん
「……はい」
◇あたし
「ちょっと、それは……おかしいって。あー、いや、最初っから全部おかしいのか。あんたさっき、人の命に関わるって言ったの、あれマジなの?」
●高校生ちゃん
「はい。場合によっては。だから早くなんとかして、飛んでいかないといけなくて」
◇あたし
「(さえぎる)バイトに! 人の命がかかわるような仕事させんな、ってあんたの職場に文句言いたい。てか、仮病で学校休んで、やりたいからやってるんですって高校生に言わせて、そのくせ道具の支給さえしなくて、それおかしいって。ダメだって。なんなんよそのバイト」
●高校生ちゃん
「ほんとは、アルバイト、とは、ちょっと違います。でも、ちゃんと意味のある仕事です。日本だと、今はわたししかできる人がいないって」
◇あたし
「掃除機で飛べる人ってこと?」
●高校生ちゃん
「掃除機で……空の悪意を吸い取れる人です」
◇あたし
「オッケーもうなんでも来なさい。続けて。余計な口挟まないから」
●高校生ちゃん
「たまに、なにか狙ったように意地悪な、たとえば普段なら逸れるような台風が急に進路を変えたり、例年にない大雪がわざわざ受験の日にかぶったり、そういうことありますよね? あれは、ときどき空に悪意が乗るからなんです。その時は私が飛んで行って、掃除機で悪意を吸い取るんです」
◇あたし
「うん。たとえば、台風を消しちゃうような、そういうこと?」
●高校生ちゃん
「そこまではできなくて、ある程度食い止めるぐらいです。でも、進路が変わってくれたり、勢力が弱まって、予想よりも被害が小さくなったりします。洪水の危険があったけど、そうならなかっただとか、飛ぶか微妙だった飛行機が飛んだりとか、そういうのが、ひと月に何回かあるんです」
◇あたし
「そのために、あんたは掃除機に乗って飛んでいくと」
●高校生ちゃん
「はい。昔はホウキだったらしいんですけど、ホウキだと悪意を散らすことしかできないから、再発することもあったって。それで昔、青森から北海道に行く船が沈んだって言われました」
◇あたし
「めっちゃ昔だね。あたし、小学校の社会科でその事故の事やったよ。台風が過ぎたと思って船が出たけど、ほんとうは台風の目に入ってただけだったって、そんな話だったと思う。それであんたひとりで、日本中のそういう『空の悪意』に対応してんの?」
●高校生ちゃん
「はい」
◇あたし
「マジか、全国」
●高校生ちゃん
「大変ですけど、わたしが頑張れば助かる人もいるんだって思うと、やっててよかったなって」
◇あたし
「そういうのは、あたしにだってわかるよ。仕事してて、そういう時だってちょっとはあるからさ。でもね、そういうのはオマケみたいなもんなんだ。……立ち入った事、聞いてごめんね。お給料もらってる?」
●高校生ちゃん
「……や、やる意味は……あるんです」
◇あたし
「意味がないなんて、言ってないよ」
●高校生ちゃん
「わたし、よく怒られますけど、さっき電話した人もホントはいい人で。お給料とか、待遇とか、もっとちゃんとできるように頑張ってるところだって言ってて、だからしばらくは我慢で、わたしも、飛び方を教えてもらいましたし、空を飛んでると、わたしにもできることあるぞって嬉しくて……」
◇あたし
「だったら。だったら。空だけ飛んでなよ。
あんたがやりがいを感じているのは本当だろうし、素晴らしい事をしているのかもしれないけど。
あたしは他人で、それを取り上げるようなことをいうの、本当に気が進まないんだけど。
でもね。人の命に関わるからとか、しばらくは我慢とか、そんなのはさ、あんたがやる事じゃないよ。大人に任せなよ。あんたは、普通に学校に行って、アイドルとか、マンガとか、なんかそういうもんに夢中になって、友だち作って、飛びたくなったら掃除機に乗ってどこでも飛んできゃいいじゃんか」
●高校生ちゃん
「でも、ニュースでもやってましたよね? 大寒波が来てるって。その寒波が悪意を持ってるんです。わたしがやらないと。わたしは、飛べて、掃除機でその悪意を吸い取っちゃえるのに。できることがあるのに、やらないで後悔なんてしたくありません!」
◇あたし
「その掃除機だって壊れたじゃないよ」
●高校生ちゃん
「……」
◇あたし
「悪い事はいわないからさ。さっきの電話の人に連絡して、今日はもうダメだって言いなって? ダメなときはダメだって伝えるのも仕事だよ」
●高校生ちゃん
「でも、それで、誰かに被害がでたりしたら、わたしのせいです」
◇あたし
「あんたのせいじゃない。すくなくとも、天気なんていうどうにもなんない物の責任を、高校一年生の子ひとりに負わせるなんてどうかしてる」
●高校生ちゃん
「でも」
◇あたし
「ダメなときはダメって早めに言ってくれれば、周りからヘルプできたりもするし、だいたいここで話してても掃除機は直んないでしょ? いまあんたができるのは、電話することだよ。怖いかもしれないけどさ。頑張んなって」
●高校生ちゃん
「(電話をかける)あの、すみません、掃除機が壊れました。はい。どうやっても動きませんでした。わたし? ですか? わたしは大丈夫です。なんともありません。あ、はい。どうにかして帰ります。──それであの、電車のお金って、どうしたらいいですか? ……いまいるところは、ええと」
◇あたし
「
●高校生ちゃん
「どこですか?」
◇あたし
「
●高校生ちゃん
「――東生田駅が近いそうです。あ……はい。いいんですか? ……いえ、そうしてくれないと、たぶんわたし帰れません。わかりました。ありがとうございます。(通話終了)遠くないから、電車代持って来てくれるそうです。駅で待ち合わせることになりました。いろいろと、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
◇あたし
「いいよ。道わかる?」
●高校生ちゃん
「マップアプリで見るので、大丈夫です……よいしょ」
間
◇あたし
「ちょいちょい。壊れた掃除機、持って帰るの?」
●高校生ちゃん
「はい」
◇あたし
「いいって。おいていきな。そんなん持ってたら電車乗るのも一苦労じゃん。こっちで粗大ゴミに出しとくよ」
●高校生ちゃん
「あの、じゃあお金」
◇あたし
「バカ言わないで。要らない要らない、たかだか数百円。じゃあ、気を付けて帰るんだよ」
●高校生ちゃん
「すみません……その、いろいろと、お世話になりました」
◇あたし
高校生ちゃんを見送って、これでこの話は終わりだ。
そう思ったのだけど、玄関までの短い廊下に置いてあったんだよね。
買ったばかりのあたしの掃除機が。
0:転換。ベランダ。
●高校生ちゃん
「これ、吸引力の衰えないただ一つのやつじゃないですか!」
◇あたし
「いい!? ぜったい土曜日に返しなさいよ!」
●高校生ちゃん
「乗り心地も駆動音も全然違います! さすが吸引力の衰えないただ一つのやつ!」
◇あたし
「話きいてんのか!」
●高校生ちゃん
「スキーウェアとゴーグルも、ありがとうございます!」
◇あたし
「大寒波を相手にダッフルコートだけじゃね!」
●高校生ちゃん
「ちゃんと土曜日に返しにきます!」
◇あたし
「よろしく。なにかあったら、あんたのバイト先にばっちり請求するってことで話つけといたから」
●高校生ちゃん
「わかりました」
◇あたし
「親御さんともきちんと話をしなさいよ! あたしなんかより先に、親と話しましょう親と。 ええと、あとそれから、よその子ども相手にお説教するの、ホントに嫌なんだけど……でもイヤだと思ったり、おかしいと思ったことは、ちゃんと相談しな。それで何とかなることだってあるんだ。それから学校はやっぱりちゃんと行きな。あんたが空の悪意とやらを吸えない日があっても、あとは大人でなんとかするって。消防官とか、自衛隊とか、あと気象庁? そういう専門家がこの国にもちゃんといて、あたしはまあ何もできないけど、それでも税金は払ってる。あんたは他の誰にもできない事をやってるかもしれないけど、空だの天気だの、そんなもんの責任をあんたひとりが背負うことないんだ」
●高校生ちゃん
「はい!」
◇あたし
「(独り言)キラキラしちゃってまったく。」
●高校生ちゃん
「今夜から冷えるんで、気をつけてください!」
◇あたし
「気をつけるのはあんただよ」
●高校生ちゃん
「はい! じゃ、行ってきます。あの、いまさらですけど、お名前聞いていいですか?」
◇あたし
「あ、そっか。ごめん。あたしは
●高校生ちゃん
「三上さん! わたし、
◇あたし
「はっ、いいじゃん。空飛ぶ人にバッチリの名前じゃん。……なに照れてんの?」
●高校生ちゃん
「えへえへへへ。じゃあ三上さん、また土曜日に!」
◇あたし
「気を付けてね、えー、七海ちゃん」
●高校生ちゃん
「行ってきます!」
◇あたし
そして白い歯を見せ、高校生ちゃんはあっというまに上昇して、ひゅん、と冬空を飛んでった。
魔女っ子の映画に出てきたおかみさんを真似ようとしたけど、あたし口笛吹けないんだよね。
0:転換。海岸。
◇あたし
後日談。
たまに、高校生ちゃんから写真が送られてくるようになった。空から見た地上、空から見た空、空と空の青の境目。などなど。
聞けば、やっと、ようやく、給料が出るようになったらしい。
去年からバイトに後輩ちゃんが入ってきて、高校生ちゃんは春から大学生ちゃんになるんだってよ。
あたしは、勤務先のコールセンター新規立ち上げで、沖縄に異動になった。それを伝えたら、台風の時期によく行くのでお茶しましょう、だって。
そういうわけであたしは今、空から掃除機の音がするのを待っているんである。
おしまい。
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