第9話 委員長は誰だ
9話
――図書室――
「ではまずこの中で委員長に立候補したい方はいますか」
さっきまでヒソヒソと話していた生徒達もシーンと静まり返った。
どうやら自ら進んで委員長をやりたい者はいないようだ。
「そしたら誰か推薦したい方はいませんか?」
「もう神崎先輩でいいんじゃないですか?」
「え?」
雨宮が僕の隣の席で頬杖をつきながら気だるそうに発言する。
「いや、まだ誰か適任がいるかもしれ……」
「神崎君でいいと思いまーす」
司書が背もたれに寄りかかって天井を仰ぎながら茶化したような口調で僕を推薦してきた。
この親父……さっさと話を終わらせたいだけだろ
「しかし、三年生は受験等の兼ね合いでなかなか委員会に参加することが難しくなる場合が……」
「その時は副委員長の雨宮が何とかしてくれると思いまーす」
「司書!?しかも私が副委員長ってどういうことですかっ!!」
渡邉先生はそんな雨宮の抗議など聞く耳持たず、今度は椅子に座りながらクルクルと回っていた。
「うーん……でも確かに今年の図書委員は私と神崎先輩以外は未経験ですし、図書委員の事よく知ってる私ら二人が一番適任かもですね。神崎先輩と関わる機会も増えそうですし……」
「最後明らかに私情が入ってなかったか?」
「気の所為ですよ〜」
けれど雨宮の言う意見はごもっともだ。
僕ら二人以外は未経験で、そんな人達に委員長を任せるのは少し荷が重いだろう……
僕が一人思考を巡らせていると、如月來夢が勢いよく立ち上がった。
ホントびっくりしちゃうからやめてほしい……
「あの!良ければ私が副委員長やるよ!?」
「來夢先輩も三年生なので却下です。受験でどちらも参加出来なかったらどうするつもりですか」
「あ、ああ……そうだね……」
如月來夢は雨宮から冷静に指摘され、隣で一人意気消沈していた。
暫くそっとしておこう……
「じゃあ私らが委員長、副委員長を務める事に賛成の方は挙手を」
何人かが安堵したような表情を浮かべながら全員が手を挙げていた。
しかし、全会一致って……
「では、今年度の委員長は神崎蓮さん。副委員長は私、雨宮雫が努めさせてもらいます。皆さんよろしくお願いします」
異論は無いとばかりに図書室内で拍手が起きていた。
その時司書は何をしていたかと言うと……
……寝ていた。
こうして僕は図書委員会委員長に任命された。
……されちゃったのである。
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