転生者編 3.異世界朝活

目が覚めると、知らない天井だ。そうだ、俺は今異世界にいるんだ。目が覚めてすぐ宿の外に出て、顔を洗った。まだ日が昇り始めたばかりなので、寒い。宿の裏手には井戸があって、その横に水貯めがある。顔を洗ってサッパリしたら、今日のことについて考え始めた。

(さて、今日はどうしようか)

お金が無いので、ギルドで依頼を受けることは決めていたが、今日はやりたいことがまだまだある。まずは武器を買うこと。これは必須だ。街の外襲われたときに、対抗手段が無いのは致命的すぎる。次は食事をとること、昨日はキノコのパスタを食べただけなので、正直おなかが空いている。そして最後はやはり、お風呂に入ることだろう。自分の体は清潔にしておかないと、病気になる可能性もあるからだ。まあ正直なところ、湯舟につかりたいという気持ちの方が強い。

(今日の予定はこんなもんか、依頼をいくつかこなさないとな。)

マサユキは冷たい水を両手ですくって飲み干した。部屋に戻って鞄を持ったら、宿主にカギを返して、宿を出た。


ギルドに着いた。中に入ってみると、朝なのに結構人が多い。みんな依頼を受けに来たのだろうか。ボードには様々な依頼があるが、武器を必要としない採集系のクエストを狙うことにした。

(さて、初心者用のクエストは・・・と。)

薬草の調達、キノコの納品、スライム討伐、それっぽい依頼は一通りありそうだ。マサユキはキノコと薬草の納品依頼を、同時に受注することにした。買わなければいけないものがあったり、今日は出費が多くなりそうな分、多めにギルが必要になるからだ。

(おし、じゃあこれで決まりだな。)

ボードから依頼書を剥がして、受付に持っていこうとしたときだ。

「ちょっと待った!」

これはラルクの声だ。

「おはようラルク。」

「おう、おはようマサユキ、じゃねーよ!何一人で依頼に向かおうとしてるんだ、一言くらい俺を誘ってくれたっていいだろう?」

そういいながら、ラルクはボードからスライム討伐の依頼書を剥がした。

「まぁ、ラルクがそこまで言うなら、今日は一緒に森に行ってあげようかな。」

一人で向かう予定だったので、まさかラルクと一緒に行くなんて考えもしていなかった。

「その言い方だと、俺が寂しいヤツみたいじゃねーか!」

そんな冗談を言いながら、一緒に依頼を受注した。


朝の森は、少し肌寒い。それにまだまだ寝起きなので、体は思うように動かず、頭の中もぼんやりしている。森に入ってすぐだが、早速依頼にあったレッドキノコを見つけた。今日は自分の鞄を持っているので、そこに入れて持ち帰ることにした。

「よし、この調子で行けば今日も余裕だな。」

「俺も負けてらんねーぜ!」

なぜか対抗心を燃やしたラルクの足が速くなった。

(子供だなぁ)

ラルクのことを内心バカにしているが、良いヤツだと思っている。

「いたぞ、スライムだ!」

どうやらラルクは目的のスライムを見つけたらしい。見たところ数は2体だ。ラルクは走ってスライムに突っ込むと、剣を大きく縦に振って、渾身の一撃をスライムにぶつけた。

「おりゃあああああ!!」

ぶしゃあ、スライムははじけて消えた。

「もう一体が狙ってるぞー。」

「そんなのわかってるって。」

マサユキは注意してあげたが、どうやらその必要はなかったらしい。振った剣をそのまま横にぐるんと回すようにスライムを切りつけると、もう一体のスライムも、はじけるようにして消えた。そしてスライムの破片を落とした。無事2体とも討伐完了だ。

「今回は余裕そうだったな。」

「後ろから不意打ちされなきゃ前みたいなやられ方しないっての。」

二人はそれから順調に依頼を進めながら、森の奥へと進んでいった。


「うおー、やっと着いたぜー!」

マサユキとラルクは、森の一番奥、というよりは中心にある湖に到着した。

「結構大きいな。」

大きさは、通っていた高校の敷地くらいの、かなり大きい湖だ。他の冒険者たちもいて、みんな休憩しているみたいだった。その中で、釣りをしている人たちや、たき火で料理をしている人達がいたり、日本でいうところのキャンプ場みたいな感じに見えた。ここに着くまでに必要なキノコと薬草は全て集まったので、あとはギルドに帰って報告するだけだ。

「なあマサユキ、この湖にはぬしがいるらしいぜ。」

「もしかしてデカいやつか?」

「デカいかどうかは分からないが、噂によれば、魔女の使い魔だとか言われてるぜ。」

今魔女って言ったか?もしかして居るんだろうか!ワクワクだ!一度お目にかかりたい!

ぎゅるるぅ

マサユキのおなかが鳴った。

「朝飯食べてないのか?」

「昨日の昼飯が最後だよ。」

「お前よくそんな状態でここまで来れたな。」

お金が無いので仕方がないが、そろそろ限界になってきた。

「早く街に戻らないか?魔女の話は気になるが、それよりもおなかがペコペコなんだ。」

「魔女の話はまたしてやるから、今日はここら辺で帰還するとするか。」

二人はギルドへと戻った。





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異世界日常 @maylin3

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