くれなゐの鯨 🐳

上月くるを

くれなゐの鯨 🐳




 七月の初めにしては冴えざえと月の明るい晩、室戸岬を鯨の家族が泳いでいます。

 とそのとき、子どもの鯨の一頭が、くるくるっと回転しながらジャンプしました。


 驚いたことに、小さな身体は、なんとも美しい紅色で、まるで伝説の人魚みたい。

 でも、楽しそうに飛んだ子どもの鯨が海面に舞い降りると、あらら、元の鯨色に。


 とうさんかあさん、にいさんねえさんの鯨が、水面を打ち鳴らして祝っています。

 南国土佐をやさしく照らし出す十五夜も、まん丸い顔をにっこりとさせています。



      🧜‍♀️



 なになに、どういうこと? (*'ω'*)

 意味分かんない、ですか? ( ;∀;)


 


      🌔



 ああ見えて、案外、粋なんですよ。

 宇宙を司る神さまって。(^_-)-☆


 なので、ご自分の手で地球に生み出されたものたちのすべてをこよなく愛しまれ、それぞれの誕生日の誕生時に、ほんの一瞬、好きな色をプレゼントしてくださるの。


 瞬間なのでたいてい気づきませんが、お宅のゲージやツグラで眠っているワンさんやミャアさんにも、山の動物たちにも、もちろん、そこのあなたにも、すべからく。



      🩴



 ええっ、信じられない、生命学的にはどういう仕組みになっているの? ですか。

 まあ、いいじゃないですか、ひとつやふたつ科学で証明できないことがあっても。 


 それより、ほら、どこからか聴こえて来ませんか? お国自慢の『よさこい節』。

 男女問わずにオトコマエ(笑)な土佐人の心意気を豪快に歌い上げる、あの……。



――言うたち いかんちゃ おらんくの 池にゃ 

  潮吹く魚が 泳ぎよる よさこい よさこい



      💄



 この民謡に「土佐の高知の播磨屋橋はりまやばしで坊さんかんざし買うを見た……」と謳われたのは真言宗智山派五台山竹林寺の若僧で、恋人のお馬さんへのプレゼントとか。ひゅ~!(^^♪


 本来なら女性に、ついでに言えば自らの剃髪にも縁がなさそうな(笑)坊さんと、俗世の極みである煌びやかな簪との取り合わせ、面白くて、ちょっと切ないですね。


 それにもうひとつ、土佐は幕末の志士・坂本龍馬さんの故郷ですから、このよか晩に誕生日時を迎えた鯨のお嬢、恋人・加尾さんの生まれ変わりだったりして。(*'▽')

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

くれなゐの鯨 🐳 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ