なんじゃらほいの世界

夏のドライブ（Take2 友人の編集あり）

——真夏の太陽は焼けるように暑い。

　私は家の扉を開くと、マンションの立体駐車場につながる階段を歩いた。

カツーン、カツーン、カツーン

　立体駐車場の中はひんやりと暗くて、時折吹く風が熱気を身体から払ってくれる。

　ふと外を見ると、太陽がギラギラとコンクリートの地面を焼き尽くそうとしていた。

カツーン、カツーン、カツーン

　私は屋根に守られ、陰になった立体駐車場を歩いた。

カツーン、カツーン

　鉄筋でできた足場は冷たく、無機質にただそこに存在するのだ。

　そうしているうちに、車にたどり着いた。

ピッ

　鍵を開けると、車の赤い扉を開けた。途端にむわっとした熱気が車から吹き出した。

「暑っ！」

　夏、蒸し風呂状態になっている車に乗り込む瞬間は、いつだって憂鬱になる。

　BMIで痩せ型傾向にある私でも熱気に当てられて、汗が吹き出してきた。

　手で身体を仰ぎながら車に乗り込み、荷物を助手席に置いてエンジンをかけた。

ブオオオ

　生ぬるい風がエアコンから吹き出る。

あついあついと言いながらブレーキを踏み、シフトをドライブに動かして、立体駐車場から外に出た。

——何処へ向かおうか。

　その答えは決まっていた。

◇◆◇

　しばらく車を走らせると、公園が見えてきた。

　公園には整備された芝生が敷き詰められ、傾斜のある坂から海が広がっている。

　公園の何もない平地にすっと車を止めた。

　汗で身体に張り付く服をジャマに思いながら、扉を大きく開いた。

　滴り落ちる汗をそのままに、海へ向かう。

ピッ、ピッ、ピッ

　私は強迫性障害の気があるようで、何度もロックをかけ直さないと気が済まない。

　今回は3度で済んだが、多い時は10回くり返すこともある。

　車のロックをようやく確認すると、金属の簡素なベンチに腰掛けた。

　木陰にあるベンチはひんやりとしており、おしりの体温は溶けて消えた。

「……」

　静かに海を眺める。

「……」

　その時、私の頬から涙が溢れた。頭の汗がおでこを伝って目に入り込み痛い。

　既にもうこの世にいないあなたを思うと、

自然と言葉が溢れ出た。

「愛してる」

　たとえ相手に届かなかったとしても、私は言わずにはいられなかった。

さああああ

　私の放った言葉は浜風にかき消され、何処かに消えてしまった。