第2話 作戦成功
赤く充血した目、血色の悪い肌と浮き出た血管。今僕の目の前にいるその生物は映画や漫画の中でよくみるあの生物と似ていた。
「な、なんだよこれ」
「これってもしかして、、、ゾンビ!?」
さっきまで笑っていた奴らは驚きと恐怖に飲み込まれたような顔になり、一人は腰が抜けて動けなくなっていた。
「コウ!お前も早くあっちへ逃げろ」
ヒロはゾンビから目を離さず前を向いた状態で僕に向かって話しかけてきた。
「お前こそ急にこんな危ないところに飛び出して、何考えてるんだよ!!」
「しょうがないだろ、体が勝手に動いちまったんだから。」
ヒロの言っていることも理解はできる。
現に僕もヒロが飛び出してから考えるより先に体が動いていた。ヒロは例え大事な友達じゃなくてもそれができてしまう優しいやつなんだ。
「わかったよ。でも僕にはお前を置いて逃げることはできない。だから、一緒にこいつを扉の外に追い出そう。話の続きはそのあとだ!」
「へっ、そうだな。
そうと決まったらそこで震えてるお前たちには俺らが外に追い出した時にすぐ扉を閉める任務を与えてやる!扉の前で準備してろ!!」
「「お、おう!!」」
ゾンビはヒロをずっと見ているように見えるがそうではない。ヒロではなくその後ろにいる血を流した生徒を見ているのだ。おそらくゾンビの狙いは血。ヒロもきっとそのことには気づいているはずだ。
「ガァァァァァァ」
突然ゾンビが大きな叫び声を上げるとともにヒロに襲いかかってきた。
ヒロは竹刀でその攻撃を防ぐが想像以上に力が強いのか振りほどけないでいる。
考える時間はない。このままじゃヒロが殺されてしまう。一瞬だ、一瞬でいいから奴の気を僕に移すことができればその隙をついてヒロが扉の外まで追い出してくれるはずだ。
なら僕がやることはただ一つ。
カリッ
僕は自分の指の腹を歯で噛みちぎり血をだした。その瞬間別の方向から漂う血の匂いにつられたのかゾンビの視線は僕の方へと向いた。
「サンキューコウ!!
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
その隙を見逃さずヒロはゾンビに強烈な突きの一撃を放った。
「「せーの!おらぁぁぁぁ!!!!」」
ゾンビが外に出たことを確認し扉の前で構えてた2人が扉を閉める。
「いよっしゃぁぁぁぁ!!!!!!
よくやった!コウ!!さすが俺の相棒だぜ!」
「いてっ、指が痛いからあんまり揺らすな!」
緊張の糸が切れたせいか体の力が一気に抜けた。
その瞬間
『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!』
周囲からの歓声が体育館全体に鳴り響いた
「なんか俺らヒーローみたいだな」
「やめろよ、別にそんなつもりじゃないし」
そんなことを口では言ったものの正直この歓声はとても気持ちよかった
「あ、そうだ
そこに倒れてる奴の手当てをしなきゃ」
「そうだな、おい!お前らも手伝え!」
こうしてなんとか一難を乗り越えることができたかのように思えた僕たちだったが、本当の地獄はここから始まるのだった。
たとえこの身が腐っても ナガノ ユキ @yuki1225
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