花畑に墜つ
炬
窓辺に降り立った天使が、翼の羽根を一辺剥いで差し出してくる。
一輪挿しの赤い花を示し乍ら曰く、天堂には此様な彩はないらしい。
ならば其れよりも、と手を曳き丘一面の赤いポピー畑に連れ出した。
彼の人は深く息を吸い込み、やがて銀糸の様な睫が白皙に翳を落とす。
ぐらりと傾いだ華奢な肩を受け止め、横抱きに抱きしめると、それは羽根一枚ほどの質量でしかなかった。
舞い上がった紅緋の花弁が、皚々たる御衣と白々とした喉元に散る。
蒼天にローンのような風の吹く、ある金曜日のことであった。
花畑に墜つ 炬 @atoz0211
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