第4話 執拗な追跡の果てに

警察署に問い合わせをした週の日曜日

俺は姉さんと休日の息抜きにドライブに行くことになった。

莉緒「特に目的地は決めずに、自然の多い道を走って、途中に雰囲気のいいカフェがあったら立ち寄ってみる、そんな感じでいきましょ」

蓮「オッケー、了解だ」

車を走らせ、高速に入った。

途中でSAにより、スタバでコーヒータイムをしちゃいながら、

自然の多いエリアで高速を降りた。

徐々に車の数は減り、車の窓から入る空気が涼しく美味しいものへと変わってきた。

そんな時だった。


莉緒「さっきから後ろの車、ずっと同じじゃない?」

蓮「まさか、少し考えすぎじゃない?」

莉緒「いやいや、絶対ついて来てる」

蓮「...」

莉緒「ちょっと、曲がるチャンスあったらどんどん曲がってみて、そしたらはっきりするわ」

蓮「わかった。でも、この前の黒色のバンじゃないね」

莉緒「それは、確かにそうだけど」

次に見えた曲がり角を曲がった。

後ろの車も、、、曲がった。

直ぐに曲がれるところがあったからまた曲がった。

向こうも、、、来た!

蓮「これって!」

莉緒「完全にあいつよ!木村智よ!」

蓮「なんだって、こんなとこまで」

俺は曲がり続けるのをやめた。

一直線上のわりかし広い道に出た。

そして俺は一気にアクセルを踏んだ。

莉緒「気をつけてね!」

蓮「もちろんだって!」

あちらもスピードを上げて追いかけてくる。

ここからが、長い長いカーチェイスの始まりだった。

莉緒「いったいどこまでしつこいのよ!」

蓮「警察に通報した方がいいかこれ!?」

莉緒「そうね!もうするわ!」

そんな時だった。ついに事が起きた。急なカーブが目の前に現れた。

かろうじて俺は、曲がり切ることに成功した。

でも、、、後ろの車は曲がりきれなかった。

そして、、、下に転落した。

気づけば峠付近を俺たちは走り回っていたようだ。

少し先に行ったところで車を路肩に止めた。

窓から外を覗くと、黒煙と火柱が下方から上っていた。


俺たちはこの後救急車を呼んだ。

物凄い恐怖を感じていたけれど、人として、そのままにすることはどうしてもできなかったからだ。

後日、この転落事故で木村智という男が亡くなったことを知った。

この世界では、本当にいろいろなことが起きるんだなと、つくづく思った。

木村智。いったい何者だったのだろうか。

今となっては、もうなにもわからない。

ただただ見惚れた姉さんにストーキングした変態男だったのか。

それとも別の理由があったのだろうか。

だとしたら、俺たちは、もっと話を聞く態度を取るべきだったのだろうか。

この世の正解とは、いったいどこにあるの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

執拗な追跡の果てに カンツェラー @Chancellor

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ