狭間の独白
彼が、私を抱き締めて地面に伏せた瞬間。
私は主が同業のゾンビに自爆を命じたのだ、と理解した。
「 」
声を出そうとした。覆い被さる彼に向かって。
だが何も聞こえなかった。当たり前だ、鼓膜を破っているのだから。
ぐったりして動かなくなった彼と、ところどころに散らばる火が付いたゾンビの四肢。
地獄だ、と思った。
保管庫にいたときよりも。人殺しを命じられたときよりも。
腕の中の見知った命が、死体になっていくのが。
私は近くにあったゾンビの片腕に噛み付いた。
特殊加工のゾンビから出てくるのは腐っていない生き血だ。鼓膜を回復させる。
それからネクの首筋に噛み付き、私の血を流す。
口が痺れる。それから次第に体全体が痺れていく。アンデッド除けの呪いだろう。
そんなの、知るものか。
私は、私は、ようやく……心の墓場を見つけられたのだ。生きているだけの死者の冷たい体と心を、安心して横たえることができる、墓場を!
それをみすみす、逃せられるか。
私は血を流し込み続けながら、髪の毛を動かしゾンビの肉片を拾い集める。
彼の焦げ落ちた皮膚をゾンビのまだ無事な部分でカバーする。
どうか、どうか。
生きてくれ。
私の墓守。
墓守少年と吸血鬼 双六トウジ @rock_54
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