第104話 懲らしめておあげなさい!

 その男の行動を見て他の男達は一斉に武器を構えるが、セアラは全く動じることなく男に剣を向ける。


 そして、次の瞬間には男の持っていたナイフは地面に落ちていた。


 その光景を見た周りの男達が驚く中、セアラは淡々と口を開く。


「あなた方、ここで剣を抜いたという事は覚悟が出来ているという事でよろしいですね?」


「は? 何を言って――」


「私は剣を向けられたら容赦なく斬り捨てます。私に斬られたくないのであれば今すぐここから立ち去りなさい」

 そう言って再び剣を男の首元に向ける。


「ちっ、調子に乗るなよ小娘!!」

 男は懐から銃を取り出すと、セアラに銃口を向ける。


 しかしセアラは動じることなく銃を構える男を見据える。


 するとシャーナがなぜかセアラの前に立ち、男との間に入る。


「「「シャーナ様! 危ない!!」」」

 全員がシャーナに叫ぶが


 シャーナは全く動じることなく叫ぶ。

「セアラ!!」


「は、はい! なんでしょう?!」


「ダメだよーーーーーー!!!」

「はい?!」

 突然の事に動揺しながらもなんとか返事をするセアラ。


「おいおい、お前正気か? 撃たれたくなかったらそこを退け!」

 男も威嚇してくる。


「おっちゃん! いい! とってもいいよ! それ、その感じ。本に書いてあったまんまだわ。素晴らしい! それに比べて、ほんと、セアラ! ぜんっぜんわかってない、そこはギロッと一睨みしてまわりの誰かに目配せだよ!」


「は、はあ、申し訳ありません?」

 全く状況が飲み込めないセアラはとりあえず謝る。


 そんなやり取りをしているうちに、いつの間にか回りの男たちに囲まれてしまっていた。


「いいねえ、本当に素敵! まさかこんな――」

「シャーナ様! 危ないですから、後ろに!」


「みんな、大丈夫? こういうときに使うセリフがあるんだって! えーっと確かあ?」


「シャーナ様、何言ってるんですか! やられちゃいますよ、皆、懲らしめておあげなさい!」


 タミコが他の皆に指示を出す。


「あーー!! タミコ!! それ私のセリフだよおお!!」

 なぜかショックを受けているシャーナを横目に、皆がシャーナを守りながら男たちをねじ伏せていく。


 あっという間に男たちが全員倒され、それを見ていたブースが驚きの声を上げる。

 そして、シャーナはブースに話しかけた。


「ブースさん? でしたか。ちょっとだけ待っててもらっていいかしら? 今からちょっとお説教が必要なので。あ、大丈夫ですよ、すぐにすみますから」

 シャーナの話を聞いていたタミコの顔つきが変わる。


「あ、シャーナ様?! そんな鬼を退治するような目で」


「私のセリフを」


「いや、あの、シャーナ様が本に書いてあったとか言うから、つい」


「私のお! セリフをお!」


「ね、そう怒らずに、ね。シャーナ様、ここからまだあるじゃあないですか、セリフ」


「セリフ~!! 言いたかったのにぃ! ま、今日はこのくらいで許してやるか」


 それは三下のセリフですとは言えなかった。

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