第102話 レオシュ様は静観の姿勢

 作戦はうまくいっているようだな。

 このままシャーナは街で食事を作り続け、我々は移動せず待機。


 これがレオシュの考えた作戦の第一段階である。


 このまま領主のロートがしびれを切らすのを待つ。

 おそらくロートは直接シャーナに危害を加えようとするだろう。


 しかし、ロートはわかっていない。


 あれの恐ろしさを。


 シャーナに手を出すという事は自ら破滅への階段を登ることになるのだという事をロートは知らない。


「まあ、なので僕は静かに見守っているしかないんだけどね」


「しかしレオシュ様、シャーナ様に何も伝えなくて本当によろしいのですか?」


「ああ構わないよ。知ってしまうと余計な緊張を与えてしまうだろ? それよりも彼女には自由に動いてもらう方がいいんだよ」


「かしこまりました。確かにその通りかもしれません」


「それにあの子には今一番大事な役目があるからね。っと、噂をすれば影だよ」


 そう言ってレオシュが指さす方向には、街の方へと走って行くシャーナ御一行の姿があった。


「どうやら上手くいったみたいだね。さて、そろそろ動き始めると思うけど、ロートの様子は?」


「はい、どうやら裏社会のドン、デズモオという男に連絡を入れたようです。直接的な手に出るようですね」


「ああ、そうだね。大丈夫かなあ?」


「さすがにご心配ですか? 裏社会のドンともなるとなかなかの者でしょうし」


「いや、そのデズモオって人の事だよ」


「は?」


「シャーナたちにやられちゃったら裏社会では生きていけなくなるだろうからさあ」


「あ。そちらの?」


「そうだよ。他に誰の心配をするの?」


「い、いえ。申し訳ございません」


 その時だった。


 遠くの方から爆発音が響き渡ってきたのだ。


 その音に反応したのか、辺りにいた人々が騒ぎ始めた。


「始まったみたいだね」


「そのようです」


「さて、どうなっていくのか。報告を待つとしようか」

 レオシュはそう言って執事にお茶を頼んだ。


 レオシュはそう言って執事にお茶を頼むと、ゆっくりとソファに腰掛けた。


 その頃、ロートの屋敷内では慌ただしく兵士が集まり始めていた。


 そしてその兵士達の中心にいるのは、ロート本人であった。


 ロートは先程からずっと何かをブツブツと言っている。


「よいか、あのフリンザ領の田舎者どもが街で騒ぎを起こしたらすぐさま拘束しろ!」


「「はっ!」」


 ロートはデズモオと結託し、シャーナたちに街で騒ぎを起こさせそこを取り押さえる作戦を立てていた。


「今度こそ見ておれ! あの田舎者どもを一網打尽にしてくれるわ!!」

 そう言って大きな腹を揺らしながら笑っていた。

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