第100話 聖女なんかじゃありません(再)

 こうして私たちの街での初めてのお菓子つくりは大成功を収めた。


 お?

 なんで泣いてんの


 大人たちが叫び出しそうな勢いで泣き始めた。


「聖女様だ……」


 なぜか口々にそう呟いているのが聞こえる。


 違うからね!

 私は女神じゃないよ!


 それにしてもこのブッセは本当に美味しい!


 デレクが頑張ってたのもあるけど、多分私の力が大きいと思うんだよね。

 今までの小麦粉料理と違って卵と砂糖で作るとふんわり感が全然違う。

 そして何より片栗粉のお陰でふんわりなのにもちっとしてるんだよね。


 なんかもう言葉にできないくらいの食感の違いで、とにかく感動する!


 うんまい!


 私が食べる分の3つだけこっそりアイテムバッグに隠、いや残し、後は全部配っちゃった。


 いや~うまいわ!

 これならいくらでも食べられる!


 そんな事をしていると、突然街の人たちが一斉に膝をついて祈り出した。


 なにごと!?


 慌てていると、あのお母さんが隣に来た。


 どうしよう

 真顔だよお母さん


 私何かやったかな?

 また変な噂とか立ってたら嫌なんだけど……


「聖女様。あなたは間違いなく聖女様です」

「いやいや、違うよ」


「いえ、間違いありません。このお菓子は神の食べ物です」

「いやいや、だから違うって」


「この国に降臨された聖なる御方よ。どうかこの国の民をお導き下さい」

「だから違うって言ってんでしょーーーーー!」

 思わず叫んでしまう。


 そうしているうちにも周りの皆が私に向かって拝んじゃってるし!

 誰か止めてーーーーー!


 結局この後も皆から拝まれ続け、私はしばらく街中で聖女と呼ばれる事になった。


 おかしい

 絶対おかしい


 私が何をしたというの

 まあいいか

 そのうち収まるでしょ



 それより、これで街にもお菓子屋食べ物が行きわたるわ

 ほんとあの領主、なんだっけ?

 そうそうロートとかいうおっさん。みんながこんなに困ってるのにやっぱり許せないな。


 でもあいつをどうにかするのはちょっと難しそう


 レオシュ様には考えがあるようだったけど眠くてよく聞いてなかったし


 ま、レオシュ様が考えてるからなんとかなるでしょ


 さて、そろそろ帰るか。



 あれから数日。


 私たちは相変わらずこの街に滞在している。

 領主があんな状態だったから、まだ安心はできないからね。


 レオシュ様には初めは怒られちゃったけどあれから毎日街に出て食事やお菓子を作りまくっている。


 なんでだかレオシュ様もノリノリで応援してくれてる。


 おかげで街の人たちも喜んでくれているようだ。


 そして今日もいつものように朝早くから起き、いつものお母さんの家に向かい厨房へ。


 さて、今日のメニューは何にしようかな?

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