第90話 夢の中

 ロートは椅子に深く腰掛けると、安堵のため息をつく。

「くそう! くそうくそう!! こちらの思惑を読んでおったか。うーむ、ああいった手前何か役職を付けなければならんが…… しかしあの男は思ったより厄介だな…… もう少し様子を見るしかないか、いや、そうかあの男を評議会の中で……」

 ロートはそういうと急いで手紙を書き、執事を呼びつける。


「これをハベタウンのアザードに送ってくれ。あの小僧め、せいぜい思い知るがいい、困って泣きついてくるがいい」

 そういうと窓越しにダルボレストの街並みを見ながら一人ほくそ笑む。



 ――――――



「レオシュ様、あのいい方はどうかと思いますよ、あの人エライ人なんでしょ?」


「ん? まぁ確かに偉いんだろうけど、そんなの関係無いよ。それよりも、さっきの話聞いていたろ? 今から忙しく動くことになるから覚悟しておいてね」

「えぇ~!? そんなぁ、頼まれたのレオシュ様でしたよお? てかあれは明らかにレオシュ様がそう持って行ったんですよ?」

「ふっ、そんなに褒めないでよ、シャーナ」

「褒めてませんけどね」


「とにかく、まずは流通ルートの確保だ。それから、作物の選定、選別、保存方法の見直し、それから……」

「あー、はいはい、わかってます。やります、やりますよ。全く、レオシュ様にはかなわないなぁ」

「うん、頼りにしてるよ。ところで、おそらくさきほどのロート評議会最高議長がこの仕事の邪魔をしてくると思うんだよ」

「は? どういうことですか? レオシュ様」

「つまり、妨害工作だよ。例えば、流通経路に警備隊を配置させたり、運搬する人員に圧力をかけたり、などなど」

「ちょ、それヤバすぎですよ!」

「まあねえ、ま、準備だけはしておこう。とりあえず宿泊施設に戻って対策を考えようか」


 レオシュは宿に戻るとすぐに作戦会議を始める。

 この先起こるであろう様々な問題を想定し、それをいかに解決していくかを議論する。

 その様子は真剣そのもので、普段の彼からは想像もつかない。だが、その表情には一切の焦りはなく、むしろ楽しげな感情さえ浮かべている。

 それはまるで、これから起きる事への期待に胸を膨らませているような、そんな印象を受ける。

 そして、レオシュはみんなに言った。


「ここからが勝負だよ、みんな」


一方で目的地に到着したシャーナは、お疲れモード全開でレオシュの話はほぼ聞いてない。アンドリューと一緒に夢の中である。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る