第88話 ロートさん?!

 ―――コンコン

 

 私はゆっくりと立ち上がり扉を開けるとそこには初老の男性と若い青年が立っていた。

 私はその二人を見て思わず笑みがこぼれた。


(ただの若造ではないか。これは楽に仕事ができそうだな)

 私はそう思い、いつものように丁寧でかつ威厳のある口調で声をかけた。


「よく来た、レオシュ殿。私がダルボレストの評議員、ロート・オルドモンドだ」

 そういうとレオシュは恭しく礼をし挨拶をした。その態度はまるで貴族のような振る舞いで、今回の評議会で貴公には私の部下として働いてもらうことになる。まあ、貴公に拒否権はないのだがね。

 そんな言葉を言外の含む喋り方だった。

 そんなロートに対し、レオシュは顔色一つ変えず冷静に受け答えをする。

 それに対しロートは苛立ちを覚えるが、それを表に出さず、余裕たっぷりの表情で話を続ける。

 まず、先日来の作物の輸出入についてロートが尋ねる。


「その件に関してはご報告の通りです、最高議長。我がフリンザ領では新たな農作物の栽培方法を確立し、今回の飢饉に対しすべての共和国領民に対して農作物の提供ができると自負しております」

「ほう。すべての? しかしそのような栽培方法を自領で独り占めというのはいかがなものだろうかね? レオシュ君」

 ロートは正義を振りかざしそう答える。


「もちろん、我が領で利益を独占するつもりなどありません。むしろこの度、飢饉を乗り越えるため多くの農民や商人の力を借りたいと考えております。しかし、今我々が作ってきた野菜や肉類はできるだけ輸出も行いましたが我々の領地だけで消費する分しか確保できなかったのです。そこで我々は、他領の商人の方々に必要な物を仕入れていただき、その代金をお支払いいただくという形を取らせていただきたく存じ上げます。無論、その売り上げの何割かをこちらに頂くということです」

 レオシュは堂々とした口調でそういった。


「ふむ……なるほど、それは素晴らしい考えだ。それならば確かに、私たちも安心して商売ができるというものだよ」

「えぇ、では……」

 とレオシュが話し終えようとした時、ロートが言う。


「しかしね、レオシュ君。残念ながら君の言っていることは嘘だ」


 ―――バンッ!!

 

 と机を叩きつけ立ち上がる。


「君は自分が何を言っているのかわかってるのかい!? この期に及んでまだそんなことを言ってるんじゃないだろうね!!」

 ロートは鬼の形相で叫ぶ。


「新しい農法? そんなものは存在しないだろう?! 聞き及んでいるところでは聖女の力と言われているようだが、どうなんだね?」

「……」

「黙ってちゃわからないよ! さぁ!」

「……」

「おい! 何とか言ったらどうだ! レオシュ!!!!」

 ロートの怒鳴り声が響く。すると、今まで口を閉ざしていたレオシュがゆっくりと口を開く。


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シャーナに関してのお知らせ。


申し訳ありません。他の執筆との兼ね合いで

こちらは毎週水曜日2:00に更新になります。


今後ともよろしくお願いします。

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