第69話 何を何える?

 どうやら、私の悩みを聞いてくれるらしい。


 ………………


 私は今までのことを母に説明した。

 すると、母は大きくため息をつく。

 そして言った。


「それなら仕方がないわね。それはもうあなたが選ばれたってことなんだから。諦めなさい」


 諦めるの?

 いや、諦めちゃだめだろう?

 というか、そんな簡単に?

 もっと真剣に考えてくれてもよかったんじゃない??


 私の不満げな雰囲気を感じたのか、母が言う。


 いや、いいんですよ?

 別に責めているわけじゃないですし。

 ただ、納得がいかなかっただけですし?

 うん、わかってますよ?

 でも、なんか釈然としないんだよぉ!!!


 それからしばらく母と話したあと、私たちは眠りについたのだった。


 翌日。

 目を覚ました私は、朝ごはんを食べて、村の中を見て回ることにした。

 まずは食料の確保からだよね。


 さあ、いつものようにやっちゃいますか。

 アンドリューたちと畑に向かう。

 母上から聞いて村人全員が集まっている。ふむ、みんな不安なのかな? まぁ、無理もないよね。


 だが安心するがいい!

 すぐに希望に変わるのだ!!


 私はタネを畑に蒔き始めた。

 そして蒔いたタネの上に手をかざし


(お願い、アンドリュー。力を貸して)


 すると……

 シャーナを中心に緑色の光の輪が広がる。


 ポンッという音と共に芽が出た。


 そのまま次々と野菜が成長していく。それを見た人々が目を丸くして驚いている。


 これならみんな喜んでくれるはず! そう思って顔を上げると、目の前には人集りができていた。


 あれ?

 どうしたの??

 

 振り返るとそこには……

 ウサギの着ぐるみを着た人が立っていた。

 おい! 何やってるんですか?

 ラノベさん


「おお! あなたは…… ラノベさんではありませんか!」


 私は思わず叫んでしまう。


 いや、だって!

 いるなんて思ってなかったし!!

 

 それにしても、ラノベさんの着ぐるみ姿は相変わらずですね。

 なんというか……

 シュールです。

 というか…ウサギの着ぐるみを着ているのは、ラノベさんだけではなかった。

 なんと出てきた村の人たち全員が着ぐるみを着ている。

 え? なんで?? どうしてこんなことに?? 私が戸惑っていると、一人の男性が話しかけてきた。

 その人は村の村長である。

「シャーナ。本当にありがとう。この気持ちを伝えるにはこれしかないと思うてのお」


 ??

 なんが?

 何を何える?


 ぜんぜん まったく いっさい 伝わってきませんね


 この村のこういうところが嫌で家出したんだった… 

 いや家出というより村出。

 そういえばラノベさんも同じようなこと言ってたっけ。

 まぁいいか。

 とりあえず、今は目の前のことに集中しよう!

 

 飢饉が起こっているのを知って、自分たちのできることを考えた結果らしい。

 そして行きついたのが、村人総着ぐるみ大作戦だそうだ。

 

 なぜそうなった?

 

 私には理解できません。

 しかし、村人たちは喜んでいるようだし……

 これはこれでアリなのかもしれない。

 こうして、今日もまた一日が過ぎていくのであった。

 

 さて、そろそろ次の村に行こうかな。


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