第70話 ドヤ顔??

 そうか…

 シャーナに精霊の加護がついたか。長年研究を重ねてきたがなしえなかったことをシャーナがな…


 母、デーナは注がれた酒を燻らせながらシャーナを思う。


「やはりあの一族にはその血が流れているのか…」


 窓の外を見ながらつぶやく。

 シャーナと精霊アンドリューの魔法による収穫量が多かったと報告を受けていたが、まさかここまでとは思わなかった。

 だが、まだ終わりではない。

 まだまだこれからなのだ。


 この忌まわしき飢饉。

 ようやく復興の兆しが見えてきた。


 しかし、このままではまた同じことが起こるだろう。

 ならば今のうちに次の手を打っておく必要がある。


 デーナは自分の研究室へと向かった。

 そして、棚の中から一つの箱を取り出した。

 中に入っているものは、小さな石のようなもの。

 これは、魔力鉱石と呼ばれるものだ。その名の通り、魔力を宿した鉱物である。

 魔道具や武器を作るときによく使われる素材であり、とても貴重なものでもある。

 しかしこの石はそれだけの価値があるものだった。


 デーナは箱から石を一つ取り出し、呪文を唱えた。

 すると、部屋の隅に置いてあった花瓶が割れ、デーナの手にある石の輝きが増し部屋の中に風が吹き荒れる。

 しばらくして風が止むと、そこには一人の女性が立っていた。

 その姿は美しい女性そのものだったが、人間とは思えないほどに存在感がなかった。女性はデーナを見ると、笑顔で挨拶をした。

 デーナはその姿を見て驚く。


 彼女が現れたということは……


 デーナは予想通りの展開にため息をつく。

 そして言った。


「君に頼らなければならないとはね……」


 彼女は微笑みながら答える。

 大丈夫ですよ。あなた様のためなら喜んで協力させていただきます。

 デーナは彼女の言葉を聞き苦笑する。

 それはありがたいことだ。だが、その代償はとても大きい。

 それでも、彼女に頼むしかなかった。

 デーナは真剣な顔つきになり、彼女に言う。

「私の願いはただひとつ。シャーナを救うことだけだ」

 それを聞いた彼女は少し驚いた顔をしたが、すぐに元の表情に戻り、デーナの言葉に応えた。


 はい。承知いたしました。あなたの望みは必ず叶えて見せましょう。


 ――――――


 デーナと精霊との密談が交わされていたその頃、シャーナたちは森に来ていた。

 シャーナはこの森が大好きだった。

 ここにはたくさんの思い出が詰まっている。


(やっぱり落ち着くなぁ)


 ん?

 アンドリュー?

 あれ? ピアラちゃんも?


 何やってんの??

 見るとそこにはアンドリューたちがいて、何かを食べているようだ。


 え?

 何食べてるの?

 ってか、平気なの??


 アンドリューたちに声をかけると、彼らは一斉にこちらを向く。


 そして……

 ドヤ顔??

 え?

 何?

 どうしたの??

 なんか自慢げにしてない??


 ああ!!

 それは私のお気に入りの木の実!

 ここで内緒でよく食べてたやつ!!


 飢饉でなくなったのかと思ってたけど…

 まだ残ってたんだねえ……

 よかった……


 じゃねえよ!!!

 私にも食べさせろよ!!


 安定のシャーナである。

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