第58話 よろしくお願い

「シャーナ様! 起きてください! 朝ですよ!」


「え? セアラ?」


 私は驚いて飛び起きた。いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。

 外を見ると、日が昇っていた。


「おはよう、セアラ。起こしてくれてありがとう。あなたはよく眠れたかしら?」


 セアラは元気に答えてくれた。どうやら、昨日のことは夢ではなかったようだ。

 セアラと話しながら私は身支度をする。

 すると、ドアのノック音が聞こえてきた。村長さんが迎えにきてくれたみたいだ。

 私たちは、急いで準備を終えて村長さんのところに向かった。

 村長さんは、私達の準備ができると声をかけてきた。

 どうやら、畑には村の人たちが集まっているらしい。

 私達は、村長の後についていく。


 それでは!

 いつものように!!


(アンドリュー! お願い!!)


 そういうと周りに緑色の輪が広がっていく。


 みるみるうちに畑には野菜が出来上がっていく。まるで魔法のようだった。

 村人達はその光景に唖然とする。

 しばらくして、ピアラちゃんが魔法を発動させる。


 ん?

 え?

 あなた魔法使えんの?

 いかん、顔に出してはいかんぞ


 ピアラちゃんの周りが赤い光に包まれる。

 光が消えると、そこにあったはずの木が無くなっていた。

 代わりに、リンゴの木が生えている。

 私達が驚いた顔のまま固まっていると、村長さんが話しかけてくる。


「これは、あなた方がやったことなのでしょうか?」


 私は答える。


「はい… 私たちがやりました? 驚かせてしまい申し訳ありません!」


「いえ、謝ることはございません。それよりも、その力があれば魔物たちから村を守ることができます! ぜひ、村の用心棒になってください!」


 村長さんは興奮しながら言ってきた。

 私とセアラは顔を見合わせる。セアラはこちらを向き頷く。私に任せてくれているようだ。

 私は村長さんに問いかける。


「あの、領主さまからのお使いがあるのでそれは無理なんですが、もしよろしければ事情をお聞かせ願えますか? お力になれるかもしれません。 それとも、この力は危険でしょうか? なら……」


 見たこともない力だろうし、この力で危険なことをしてしまうかもしれないと思われても仕方ないって思ってしまったのだ。


「いいえ! そのような心配は必要ないです! むしろ、とても助かります! どうか、よろしくお願いします!」


 村長さんは、深々と頭を下げた。村長さんの言葉を聞いて安心した。

 そう思うと嬉しくなってきた。

 セアラの方を見る。

 セアラも微笑んでくれていた。


「こちらこそ、よろしくお願いいたします!」


 こうして、私とセアラは村の事情を聴きしばらく村で暮らすことになったのである。


 次の日の朝、私達は村長の家に向かっていた。

 村長さんに呼ばれたからだ。昨日の依頼について話があるらしい。

 私達は村長の家にたどり着く。中に入ると、村長さんがいた。

 私達に気づいたようだ。近づいてきて、話を始める。

 なんでも、村の近くにオークが出たそうだ。

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