第43話 この村はもう大丈夫
う〜ん
どこを見ても
なんだかやっぱり廃れてるね
飢饉の影響がこんなにひどいなんてやっぱり実際に見ないとわかんないもんだね
出発して2日、クエザの村の一つ前の集落に到着したんだけど、ほとんど人はいない。集落の代表っておじいちゃんが挨拶してくれたけど、もうこの集落に残ってるのは小さな子供と年寄りと病人だけだって力なく怒ってた。
なんかごめん
そう思ったけど、悲しくしても苦しそうにしても解決しない。
私達は代表にパンプキの実と種を渡して、さっそく畑に案内してもらった。
その間、セアラとタミコ、デレクには村の人たちの食事を準備してもらう。
ポトフだな、きっと
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「うわぁ!! おいしいね!!」
「ほんとだぁ! おいしい!!」
子どもたちが口々に騒いでいる。恐る恐る手を出した老人も
「なんじゃこりゃああ!」
「うおぉぉぉぉ!!」
と涙ながらに叫んでいる。
「さて、と。 こんなもんでどうでしょう?」
私はみんなの顔を見ながらゆっくりと話しかける。そんな話など誰も聞いてないんだけども。
「あせんな、あせんな。まだまだたくさんあるから。そんなに慌てなくても大丈夫。ゆっくり食べてね。 これからはいっぱい食べられるから」
「「ありがとう!! お姉ちゃん!!」」
子どもたちにそう言いながら
「ほら、あなたたちも食べてください。遠慮しないで!」
と言って老人たちにも取り分ける。
「あ……ありがとうございます」
「いや、いいんですよ。これが私の仕事ですから」
「それにしてもこれはなんですか? 見たこともない食べ物ですけど……」
「まぁそれは後で説明しますよ。それよりも早くしないと無くなってしまいますよ?」
「あら本当ですね。ではいただきますね」
みんな美味しそうに料理を食べている。その笑顔を見ているだけで嬉しくなって来る。
「しかしあなた様は一体何者なのですか?」
食事を終え、お茶を飲みながら老夫婦が尋ねてくる
「ん~まだ名乗ってなかったっけ? 私の名はシャーナ・ホープっていいます」
「シャーナ様? ……ですか」
「そう。この村の食糧事情を改善するためにやってきたの」
「そうだったんですか。それで…あのぅ……私たちは助かるんでしょうか?」
不安げな表情を浮かべた老婆が尋ねてくる。
「はい、もちろんですよ。心配しないでください」
「ありがとうございます。本当に感謝いたします」
そう言って深々と頭を下げる老夫婦を見てるとなんだか胸の奥がきゅっと締め付けられるような気がした。
さて、そろそろ頃合いかな?
私は立ち上がって マジックバッグ【空間収納】からいくつかの野菜のタネを取り出し、それを【土魔法】で作った大きな器の中に入れていく。
その様子を見ていた人々は驚きの声を上げる。
そりゃそうだよね。突然何もないところからたくさんの野菜のタネが現れたわけだし。
私だって最初はびっくりしたもの。
でも今はもう慣れっこだよ。
私が出した野菜のタネを子ども達が手に取って不思議そうな顔をしている。
ふふっ 可愛いなぁ。
その姿を見て微笑みながら私はタネを畑に蒔き始めた。
そして蒔いたタネの上に手をかざし
(お願い、アンドリュー。力を貸して)
すると……
シャーナを中心に緑色の光の輪が広がる。
ポンッという音と共に芽が出た。
そのまま次々と野菜が成長していく。それを見た人々が目を丸くして驚いている。中には口をあんぐり開けてる人もいるよ。
あははっ いい顔だねぇ。
あっという間に全ての野菜の収穫が完了し、同じように種を植え育て収穫と同じことを繰り返す。
何度か繰り返してすべての作物を収穫し終わると子どもたちは大喜びで駆け回り、大人たちは涙を流していた。
この村はもう大丈夫。
さて、クエザの村に向かうよ、みんな!
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