第44話 そのくらいはできるだろ?


 さらに二日

 旅は何の問題もなく進んでいき、ついにクエザの村に到着!!


 クエザの村は人口五百人くらいの小さな村で、宿屋や雑貨屋などの最低限の店しかないんだけど、それでも久しぶりにベッドで寝れるとあって私もテンションが上がってしまう。


 セアラの話ではもともとこの村は街道に面していて利便性も高く周辺の居住地との行き来に使われていたらしい。それが飢饉と魔物の出現のせいで通行不能となり、やむなく廃れていったそうだ。


 さっそく村長さんに挨拶に行くため村長さんの家に向かうと、おじいちゃんが出てきた。


 この人が村長さんか


 この村も飢饉のためにみな弱っているようだ。

 セアラは私の方を見て、少し不安そうな顔をしたけど、私は笑顔を返しておいた。

 そしてすぐにみんなを畑に集めるようにお願いしておいた。



 さて挨拶も済ませたし

 いつものようにアンドリューにお願いしてっと


「アンドリュー、頼むよ!」


 畑の真ん中に立って、両手を広げて〜


(アンドリュー、お願い!)


 私を中心に緑色の光の輪が畑一面に広がる。するとそこからたくさんの芽が出て膨らんでいき、そのまま花が咲き、実がなっていく。


 いつもの光景だけど、初めて見る人にとっては驚きだよねえ

 

 さ、できたよー!


 畑には黄金色になった小麦がたくさん実り、畑の隅にはトマトやコーンもできている。畑の周りにいる人たちに声をかける。


「さあ、みんなを呼んで来て! 今日はお腹いっぱい食べられるよ!!」


「おお! ああ、ありがとうございます、聖女様。本当にありがたいことですじゃ」


 おじいちゃんたちに泣きながら喜んでもらったよ。


 よかった

 少しは役に立てたかな

 なんか聖女とか言ってたけど


 聞き間違いか?


 まいっか


 これはアンドリューがやったことだしね



 その後、みんなに畑の世話の仕方を教え、一緒に収穫を手伝った。もちろんその間も畑はどんどん大きく育っていく。以前の作物がよく穫れていた頃よりも収穫できているんじゃないかっておじいちゃんたちが言ってたな。


 いつもの光景だけど、初めて見る人にとっては驚きだよねえ


 さ、できたよー!


 よし、なんだか調子に乗ってきた!

 


 うーん、今日はみんなが食べやすいものになるだろうけど

 明日の昼は宴でいいよね?


 いいに決まってる

 食べるものにはこれで困らないんだから!


 おっといけない

 収穫作業をお手伝いしなきゃだね


 みんなのごはんの準備ができたらしく、セアラとタミコが畑にやってきて収穫の手伝いをしてくれる。せっかくなので収穫した野菜を持って行ってもらいスープも作ってもらうことにした。


 そのくらいはできるだろ?


 デレク


 ところが


 ところが、だ


 セアラとタミコが言うにはデレクは村の人にテキパキと指示を出し、あっという間に料理ができていったというのだ。すごい手際の良さで驚いたと言っていた。


 だメンズかと思ったら意外にやるらしい

 ちょっと意外

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