第25話 幸先いいんじゃない?

 私たちは早速、狩猟に向かうことにした。

 しかし、さすがに私一人だと心細い。

 そこで、護衛のセアラにも同行してもらうことになったのだ。


「あのぉ、シャーナ様、アンドリュー様、一つよろしいでしょうか?」


「どうしたの? セアラ」


「はい。どのような肉を探していきますか?」


「そうねえ。なんでもいいんだけどね。できれば鶏系のお肉があればいいかなあ」


「承知しました。ではまずは鳥を狩りに行きましょう」


「うん、お願いね」


 こうして私たちは森へと向かった。


 セアラの説明によると、飢饉でそれまで森にいた動物はほぼ狩りつくされており、森の入り口付近では魔物しか残っていないとのことだった。魔物の肉は食べられるか聞くと、食べられないことはないが飢饉までは好んで食べていなかったそうだ。なんにせよ、狩り尽くされているなら仕方がない。


 森の奥まで行かなくては、そう思っていたのだが入り口付近に着いた途端、私の足元を何かが走り抜けていった。

 

 ウサギ!!


 なんだよ!

 びっくりしたあ!!


 ん?

 よく見るとかわいいじゃないか

 おー、こっちを見る赤い目がかわいらしい!


 よしよし!


 なついてくるならお姉さんがかわいがっていいお肉に

 ぐへへ


「シャーナ様! お気を付けを!! それはただのウサギではありません! 魔物です!!」


 え? 魔物なの?

 めっちゃかわいらしいフォルムだよ?

 あれが魔物!?


 ……確かに、牙もあるし、角もあるような……

 

 え?

 じゃあ、私は今危なかった?

 うわあ、やばかった

 思わず撫でそうになったよ

 あぶない、あぶない。


 気を取り直して!

 とりあえず狩ろう!


 仕留めて料理すればいいだけのことよ!

 

 さて、どうやって?

 

 こういう時は決まっている!!

 片手を腰にあて、もう片方の手で魔物を指さしこう言うのだ!


「さあアンドリュー! いくのよ!!」


 あのさ、アンドリュー

 なんでフワフワしてんのよ


 いくのよ!

 って言ったでしょ?

 聞いてなかったの?


「おい! アンドリュー!!」


 フワフワしてんなよ!

 おい!


 そう思っていると


 セアラが一閃!

 ウサギの魔物を退治した。


 はやっ!


「お怪我はありませんか? シャーナ様」


「え、ええ、驚いたわ。魔物ってもっとケバケバしいのかと思ってた。本にはこんなカワイイ魔物なんて出てこないわよ?」


 「はい。もちろん物語に出てくるようなケバケバやドクドク、ワチャワチャなども多く存在しますが」


 ……まじか


 まあいいや、とにかく今は肉だ。せっかくセアラがいるんだから解体を頼もう。


「セアラ! お願い! 解体!」


「はい、承知しました」


 まずはウサギのお肉ゲットだぜ!!

 幸先いいんじゃない?

 これは期待できそうだね!


 しかし

 ケバケバやドクドク、ワチャワチャってどんな感じなんだろう?


 わからん

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