第10話 レオシュ様、苦笑い

 あれから1週間。


 私はアンドリューとともにこの不思議な畑の調査をしていた。

 まあ、調査と言っても大したことは何もしていないんだけど、とりあえず、この畑の野菜を食べてみた。

 

 普通に美味しかった。


 それから、野菜が育つところを見たかったのでアンドリューにお願いして何度か野菜を育ててもらった。


 だけど野菜が育つのに特別なことは全く必要なかった。ただ、アンドリューが手をかざすと私の周りに緑色の輪が広がり野菜が実った。


 これだけだ。


 正直、この謎現象はよくわからなかったがいくつか分かったことも出てきた。


 そもそも、精霊魔法とは何か?

 

 わからん

 

 なぜ野菜が育つのか?

 

 精霊魔法だから

 

 どうして土の中から出てきたのか?

 

 もともと畑だったところに種が残っていたからと考えられるんだけどその割にはみたこともない野菜も混じっていてどうやって食べるのかすらわからないものもあった。


 もうほとんど謎だったんだけど。


 でも、一番の謎はアンドリューとわたしの関係なんだけど。


 あの後、何度か畑で野菜を実らせてわかったのは私が離れていると野菜は育たない。けれども、その野菜からとれた種を育てると私がいなくてもごく普通に芽が出てくる。ちゃんと収穫できるのかは今後時間をかけて観察するしかない。


 もう訳が分からない。


 ちなみに、この畑の作物だが、セアラによれば収穫しない限りずっとこのままの状態らしい。関係者全員、最初驚いていたが、すぐに納得してくれたそうだ。シャーナが蔵書の中から飢饉を乗り越える方策を見つけたと。


 ちょっとまってもらおうか。

 誰が何を見つけたって?


 うーん、まあよく考えると概ね間違っていないような気もする。


 納得はできないけど。


 そして、セアラは私にこう言ってきた。


「ということになっておりますのでシャーナ様も口裏を合わせてくださいね」


 口裏を合わせて、の時点でごまかしていこうぜ感満載じゃね?


 いちいち全員に説明して回るわけにもいかないしまあいっか


 そう考えることにした。


 そしてこの一週間、書庫に通いつめているがアンドリューと出会うことになったあの本はどこを探しても見つからなかった。その代わり、というのもおかしいがアンドリューが育てた野菜を使った料理本が5冊見つかった。


 レオシュ様に訪ねたがこれらの蔵書は領主のご先祖様が集めたものでどんな本があってどうやって集めたのか、なんのために集めたのかも不明だそうだ。


 ほんと使えねえな、現領主。と考えていたら執事のクレートさんが冷たい視線でこちらを見てきたので秘技、愛想笑いで誤魔化しておいた。やっぱり私、できる女だな。


 あ、話がそれたけど、結果、隣の領に行くのは延期された。しばらくこの館でこの謎現象についてレオシュ様と検証することになったからなんだけどさ、私の読書タイムの保障は?


 レオシュ様、苦笑いするだけで保障すると言ってくれないんだけどなんでよ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る