第9話 私のだって…

 その後、領主のレオシュと執事のクレートさんがやってくる。


「セアラから話は聞いたぞ。その野菜を育てたのは精霊アンドリューなのだな」


「ええ。そうなんですけど」


「リフ! リーフ!!」


「アンドリューはなんか言ってるのですが、なぜか野菜が育っていたのです。おそらく、精霊魔法を使ったのだと思います」


「なるほど。確かにあの畑には精霊の気配があった。しかし、野菜を生やすとなれば相当な魔力が必要になるはず。アンドリュー一人でできるとは考えにくい。誰かが手助けをしているはずだが」


「リフ! リフ!」


 アンドリューが何か言いたげにしている。


「ちょっと待ってアンドリュー。わかんないよ」


「リ!! リフ!!」


 アンドリューは必死に訴えかける。

 しかし、何を言っているのかわからない。

 するとそこでクレートさんが


「アンドリュー様のおっしゃっていることはわかりますよ。私めもアンドリュー様にお力添えいたしますゆえ、どうかもう一度やって見せていただけますか?」


 そういうと


「リフ!!」


 アンドリューは笑顔になる。

 よかった。ちゃんと意思疎通ができるみたいだ。


「アンドリュー、何がしたいの?」


 私はアンドリューに問いかける。アンドリューは私の手を取り畑に向かって歩き出す。


「アンドリュー、私も連れて行くの?」


「リフ!! リーフ!!」


 アンドリューは答える。

 

 そのまま畑まで歩いて行くとアンドリューは畑に向かって両手を広げる。


 次の瞬間、アンドリューの手からは光が放たれ畑全体を包み込む。


 するとそこにはたくさんの野菜や果物が実っているではないか。


 おお! すっげえ!!


「すごい! さっきの畑が一瞬でこんなことに! アンドリュー凄いわね!!」


「リフ!! リーフ!!」


 アンドリューは得意気に胸を張る。


「これは一体どういうことだ? さっぱり意味が分からん」


 レオシュ様は頭を抱えている。


「私にも全く理解できません。ただ一つわかるのはアンドリュー様の力のおかげで作物がよく育ったということです。これで領民たちも生きながらえることができます」


 クレートさんは涙ぐんでいる。


「そうだな。しかし、これはもしかすると。いや、そんなことがあるわけないか。うーむ、どうしたものか」


 レオシュ様は何とも言えない表情だ。


「どうしたのですか?」


 気になって聞いてみたけど教えてくれないみたい。


「いや、なんでもない。とにかくこのことは内密にしておいた方がいいだろう。下手に話せば混乱を招くだけだ。いいな?」


 やばい、目が本気だ。殺し屋の目をしている。


「はい。承知致しました」


 私はできる女だ。ここは逆らってはいけない。


 そしてなんと、セアラはお菓子を忘れることなく持ってきてくれた。


「アンドリュー、これがお菓子っていうものよ! セアラが私のためにもってきてくれたの!! いい! これは私の」


 パクッ!



 うああああああ!!!

 なんで食べちゃうのおおお!!!


 私のだって…

 私のだって言ったじゃないかあああ!!!!

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