第6話 ほら、みんなに謝りなさい

 くっ、なんてことだ。

 まさかこんなことになるとは。


 ああ、私には干し果物さえなくなってしまった。

 

 ああ……

 ああ……

 もう……

 

 いいもん。私は干し果物なんかなくても生きていけるもん。そう思ってふと周りを見てみるとアンドリューがいないことに気づく。

 

 あれ?

 どこいった?

 

 あ!!

 あんなところに!


 なんとアンドリューは窓から外に飛び出そうとしていた。


 ちょっと待ちなさい!!

 何をしているの!?


 急いで窓辺に向かうがすでに遅かった。


 バタンッ!

 しまった!!

 逃げられた!


 急いで追いかけるがもうどこにいるのかわからない。


 くっ?!


 こうなったらアンドリューを見つけ出して連れ帰らないと。


 私は館中を駆け回りアンドリューを探すが見当たらない。


 ガキィィィィン!!


 何かの音がする。あ、この部屋からだ。訓練場か?

 そっとドアを開けるとそこには剣を持った騎士とアンドリューがいた。


 え?

 何しているのアンドリュー?


 そう尋ねるとアンドリューは答える。


「リフ! リーフ!」


 いやわかんねえし。


 ふと見るとテーブルの上に干し果物が置いてある。


『だって、ここに置いてある干し果物は僕のものなんだから僕のものなの!!』


 って言いたいの??


 いや、ちょっと何言ってんのかわかんないよ。


 っていうかこれ、あなたのために出したんじゃなくてね。


 するとアンドリューは干し果物を手に取りまた口に運んでいこうとする。


 そこにものすごい形相の騎士が迫ってくる!


 ちょ、ちょっと待って!

 だめだよ!


 そう思いアンドリューを見るとコクっとうなづき口に入れようとする。


 いや、まて、アンドリュー。

 

 私は食べていいなんて思ってないよ!!


 アンドリューは騎士の前に出ると


「リーッフ!!」


 と一言叫ぶ。

 すると地面から蔓が伸び騎士を巻き付ける。


 なにぃ!?


 そしてそのまま地面に引きずり込もうとする。


 ぐぅぁああ!!


 という声とともに騎士は倒れこむ。


 ……アンドリュー。


 恐ろしい子。


 私はその光景を見ながらそう思った。


 アンドリューは私に向かってにっこり微笑むと


「リフ!!!」


 ふんす! じゃねえよ!

 どうすんだこれ?


 私が慌てて騎士の方に行くと彼はうずくまったまま震えている。

 大丈夫ですか、と聞くと怯えた顔でこちらを見る。

 

 まあそりゃそうだよね。いきなり地面から植物が現れて巻き付いてくるんだもの。

 

 怖いよね

 わかるー


 だが安心して欲しい。


 アンドリューに悪気はないのだ。

 ただお腹がすいていただけなのだ。


 だから、ね

 許してあげて欲しい。


 そういうと騎士は少し落ち着きを取り戻し、なんとか立ち上がることができたようだ。よかった。


 さて、では本題に入ろう。


「えっと、アンドリュー? この干し果物はみんなのものなので食べちゃダメなんだよ?」


 そう言うとアンドリューは首を傾げる。


 あー、これは通じないな。


「ええっとね、ここはみんなの場所なんだけどね、アンドリューは勝手に入ってきちゃったの。だからね、干し果物はみんなで分けるの。わかった?」


 そういうとアンドリューはうんうんとうなづき干し果物に手を伸ばそうとする。こらこら、それはあなたのじゃないの! 手を伸ばすアンドリューの手をぺちんと叩く。


 あー、もう!


 ほら、みんなに謝りなさい。


 アンドリューは私に叩かれた手を痛そうに押さえながらみんなに頭を下げる。


 ごめんなさい


 うんうん、いい子だ。

 ちゃんと反省できたみたいだ。

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