第5話 私の果物は?

「リフリフ、リフリフリフ。リフ、リフリフ、リフリフリフ。リ……」


「あーもう!! わからん!」


 何を食べたいんだろう?


 うーん、ここはひとまず落ち着こう。深呼吸だ。


 スウゥゥハァァア


 水を一杯コップに注ぎ


 よし落ち着こう


 するとアンドリューが迫ってきて私をはねのけ、一気にコップの水を飲み干す。


 水かよ、水なのかよ!!


 まあよかった。


 さて、じゃあそろそろいいかしら?

 なにして欲しいの?


 そう聞くとアンドリューは満面の笑みで答えた。


 おお、やっと通じたか。


 水を飲んで落ち着いたアンドリューはさらに水を要求してくる。


「はいはい、わかったわかった。水ならいくらでもあるからねえ。わたしは昨日ゲットした干し果物があるし。あのねアンドリュー、この領のみんなは飢饉で食べるものがないんだって」


「リ? リー?」


「うん。わかんないよねえ。まあそういう状況だからね、あんま大きな声でお腹すいたあ!! とか言えない状況なのよ」


 そういってアンドリューに説明をする。

 するとアンドリューは理解してるのかしていないのかわかんないけどうんうんとうなづいている。


 いい子だ。


 アンドリューがうなづくと同時に空腹を知らせる音がなる。


 おお、なかなか可愛い音を出すじゃないか。


 ほれ、これでいいかな?

 干し果物をあげるとアンドリューはそれを両手に抱えて口に運ぶ。


 そして、その小さな体からは想像できないほどのスピードでそれをたいらげていく。


 おお

 すごい


 あっという間に平らげると今度は水が飲みたいと要求してくる。


 はい、どーぞ。


 ってか、さっきは食べなかったのに順番があるの?


 不思議だわ。


 そう思いながらも私は干し果物を取り出すとアンドリューに手渡す。


 彼はそれを受け取ると口の中に放り込むように食べる。


 こら、もっと味わって食べなさい。


 でも、さすが男の子だけあってよく食べるわね。


 お姉さん感心しました。


 アンドリューは満足そうに私を見つめる。


 はいはい、ありがとうございました。


 私はアンドリューからお皿を受け取ろうとするが渡してくれない。


 ……?


 どうやらまだ欲しいらしい。


 仕方ないのでさらに干し果物を渡してやる。


 昨日ゲットした干し果物はもうすっかりなくなったわよ。


 まて、まってアンドリュー。


 私の果物は?


 おい!


 私の果物はああああああああああああああああ!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る