SS② 女王とメイド
半年前にうちの店の裏に新しい店が第二店舗が開店した。
この店はかの勇者様への最後の復讐として作った店だ。
『男娼館』として開店したこの店は元勇者クレイを含み6人で始まったのだが、意外にも人気になって、今は15人を超える男娼達が働いているのだ。
そんなクレイ達をよそに、王城では勇者を追い出した王女エリノーラとその愛人として噂のゲラルドが陰口の対象になっている。
当のゲラルドは気にも止めず、女性同士のあれを堪能して面白いと言っていた。
ただゲラルド的には店以外での性欲値が低いため、行為には全く興味を持たず、ただ見て楽しんでいるそうだ。
そりゃ……絶世の美女が目の前で百合を繰り出せば、面白いのかも知れない。
「エリノーラ」
「っ…………な、何の用かしら」
既に性欲値の色が黒から赤に変わり、いつの間にか青のスペードと紫のダイヤが追加されているエリノーラに会いに来た。
「長年俺の試練に耐えた褒美を遣わす」
「っ!?」
「全てを
それはつまり、許してやるという事だ。
しかし。
「や、やめて!」
「ん?」
「お、お願い! このままにして!」
そう話す彼女は俺の前に土下座し、俺の足を抱き抱える。
「お願い! 何でもするから! この生活を奪わないで!」
「エリ……」
隣のミーナと同じく俺の前に土下座をして片足を抱き抱え、エリノーラと同じ言葉を繰り返す。
「まあまあ、落ち着け。二人とも。俺は何も二人の生活を奪うつもりはないんだ」
「ほ、本当?」
「もちろんだ。クレイも今では館で十二分に働いて儲けてくれるし、世の中の女性の為にもなっている。妻達のおかげもあって、もうお前達に対する怒りは残っていない」
「よ、良かった…………」
「そこで一つ俺からの提案だ」
「提案?」
「まだオリビアが子供を身ごもっていない。という事もあり、王様からは色々うるさいんだろう?」
「そうね。お父様からは何が何でも世継ぎを残すように言われているわ」
王族を生き残らせるのも仕事と言えるだろうからな。
「そこで、俺の子を王にはしたくない。これは理解してくれるな?」
「う、うん」
「だからエリノーラには――――子を身ごもって貰いたい」
「…………」
「…………」
エリノーラとミーナが肩を落とす。
今は二人の時間が楽しいだろうに、そこに誰か邪魔をすることになるだろうからな。
「分かったわ…………誰の子供を身ごもればいいの?」
「エリ!?」
「ミーナ。ごめんなさい。それでも私は貴方と一緒にいたい。元に戻ったら、多分……私が私じゃなくなるわ。それなら我慢してでも誰かの子を身ごもるわ…………他の男に抱かれた女は……嫌い?」
「そんな事ない! 私は……エリの幸せだけが望みなのだから!」
「ありがとう。ミーナ」
目の前に百合が展開されつつあるが、俺の咳払いで二人を正気に引き戻す。
「それで、その相手なのだが」
「う、うん」
「相手の男は――――――なしだ」
「へ? なし?」
「ああ。お前を身ごもらせる相手は――――――こいつだ」
と、俺が指差したのがミーナだったので、二人がポカンと俺を見つめる。
――「こいつ、何言ってるんだ?」と言わんばかりの表情である。
「まあいいだろう。二人とも俺の手を握れ」
二人が俺の手を握ったので、早速スキル『性痕』を二人に付与する。
「ん? これは?」
「それは『性痕』というスキルだ。端的に言えば、愛している相手同士で妊娠出来るスキルだ」
「「へ?」」
「女性にしか
「「へ?」」
二人とも随分と間抜けな顔をするんだな。
「一応、お前達の子供の
「「へ?」」
「じゃあ、俺は帰るから、俺とオリビアに王子を求める声がこないように頑張ってくれ。じゃあな」
最後までポカンとなって魂が飛んでいる二人を残して王城を後にした。
それから一年後。
エリノーラ王女が無事出産した事が王国内に伝わる事となる。
ただ、彼女は頑なに父を公表しなかったという。
それと同じくして、彼女のメイドも出産したというのだが、とある噂によれば、彼女達は立ち合い出産を行ったと噂されている。
同じ日、同じ瞬間に産んだ子は、名前も似せていれば、その顔もとても
それから一年置きに彼女達は出産を繰り返し、十数人の子宝に恵まれるのだが、生まれた二十人を超える子供達は、どこか全員が似ていると噂される程であった。
噂されていた隠れ父ゲラルド説はいつの間にか消え去り、エリノーラ王女とメイドのミーナの子供なのではないかと憶測が飛び交うが、お互いに女性である事は間違いない事実なので、あくまで噂とされている。
ただ、国王が
俺を追放していいんですか?ヤバいスキルで置き土産しておきますね?さようなら 御峰。 @brainadvice
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