第10話 二人の夢はつづく 最終話

「まっまさか総子、いや麻野七星のことですか」

「そうだ。なんでもお前達は同級生とか聞いたが、それだけの仲でそこまでするか」

「そうですか彼女が裏で動いてくれたんですね」

「そうだそれだけじゃない。麻野七星さんが会長さんさえ良かったら、このジムを買い取り七階建てのビルにするというんだよ。おったまげたよ。土地と建物を入れたら十億近くなるぜ、一階二階貸し店舗、三階四階をジム五階はお前の住まい、ただし六階七階は麻野七星さんの事務所にするそうだ」

「まさか……」

「勿論お前がこのジムの後を継ぐのが条件だそうだ。俺も安心して引退出来るよ。老後の資金も入って来るし」


 俺は驚いて総子に電話入れた。総子に迷惑掛けないように消えようと思ったのに。

「もしもし総子かい俺だよ」

「ふっふふやっと掛けて来たわね」

「しかし、とてつもない話を会長から聞いたよ」

「お金は心配しないでウチの事務所におねだりして出して貰ったの。何に使うのと聞かれたから私の恩人の為にと言ったら、そうか彼は我々にも恩人だからとOKしてくれたの」

「君も掛け引きが上手くなったね」

「当然でしょう自慢じゃないけど今では一人前の歌手よ。そして立派な大人。でもこれは恩返しの一部まだまだあるから覚悟して、それと聞いたわ。私と距離を置こうとしたそうね、なによ! なにが星屑の街よ。かっこつけないでよ」

「いやそれはあのその……」

「冗談よ。ただ約束していつまでも私の側に居てとは言わないけど見守って頂戴。優に守られて居ると思うと私頑張れるの」

「分かった、分かった約束する。これからも宜しくな」

「うんありがとう。いつかまたお忍びで飲みに行こうね」

改めて思う。成功することは凄い事だ。統子は名声と莫大な資産を手にした。俺は世界チャンピョンになれなかったけど育てる夢がある。それを総子が与えてくたれ。そして今日もジムで俺は汗を流す練習生に気合を入れる。そしてジムのラジオから流れるI sing for you曲がジムの中で鳴り響く。


  了

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

I sing for you  西山鷹志 @xacu1822

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ