第十四章 ~ 石清水の川の龍 ~
次の日、蝋燭凝視の修行の後、キウは、燃え残りの蝋燭を持って川に来た。
提灯を上に上げたり下げたりしながら、昨日、目玉が合った辺りを確認した。
今日は、丸い宝石の様なものも、目玉の様なものも無さそうだ。
あれは、何だったんだろうか?
気のせい?
夢?
キウは、そっと水の中を確認しながら歩いて行った。
やっぱり、宝石の様なものも、目玉の様なものも無さそうだ。
キウは、安心して水を一掬(ひとすく)い持ち上げた。
そして、川の水を口に含んで、斜め上に目をやった。
「!!! ブ――――――!」
キウは、水を拭きだした。
目玉が、ギョロと川の水の上にぶら下がった鍾乳石の向こうからこちらを見ていた。
「なんだ、もったいないなぁ・・。 お前には、この石清水がどれだけ貴重なものなのか分かっておるのか?」
「は!? この、目玉! しゃべる!」
目玉は、ゆっくりと鍾乳石の幕の向こうから、こちらに向かって来る。
岩の中に閉じ込められていては、逃げようがない
『逃げ場がない・・。 考えろ! 考えろ、俺・・!』
「逃げなくていい。 私だよ」
この雰囲気・・・。
「あ!」
キウは、思い出した。
『おじいさんの家での蝋燭の修行の時のねずみだ! そして、空に現れた・・・・龍だ!』
「そうそう、覚えていてくれたか」
「私って、誰なんだ?」
「私は、この川を守る龍だ。 この石清水の川は岩の外に出て、大きくなって、ず~っと下流は海につながっておる。 それが、ぜ~んぶ、私だ」
「何してるの?」
「お前を見に来たのだよ」
「何で?」
「お前が、まだ生まれたばかりの頃から、ず~っ、と見ておる」
「俺は、会った子の無い」
「私は、いつも隠れておるから」
「じゃ、何で姿を見せたの?」
「時が満ちたからだ」
「何の時が満ちたの?」
「お前が私の相棒になる為の訓練だよ」
「相棒?」
「私は、お前の、婆さんの相棒だった」
そう言えば、キウは婆ちゃんから白と虹色の龍のことを聞いたことがあった。
その白竜が、飛ぶと足元に虹が架かると。
「でも、お前、虹色じゃない・・」
「何を言っておる! 色なんぞ、光を反射するから見えるんだ。 蝋燭の火で私の虹が見えるわけがない・・」
「・・思ってたよりも小さい・・」
「私は、自分の体の大きさを変えることが出来るんだ。 こんな狭いところで、大きいまんまだったら身動き取れないだろう」
「ふぅん・・」
「まぁ、水を飲め。 石清水を飲んだら、私の訓練を始めてもらう」
「婆ちゃんも受けたの?」
「当たり前だ。 この訓練を受けんことには、私の力に肉体が耐えられないからね・・」
キウは、少しうれしかった。
婆ちゃんを知っている存在に会えた。
婆ちゃんと同じ訓練が出来る。
そして、何よりも、これから戦いの為の肉体鍛錬が出来ることが嬉しかった。
キウ @Dariahrose
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