第15話 (最終話)優劣の無い結婚式とその後。
大鍋亭ではリナとアクィが腕を振るってご馳走を作ってミチトとイブとメロ、ロゼの帰宅を待つ。
帰ってきて家族が揃うと妻達は解禁とばかりにテーブルに指輪を並べてニヤニヤとする。
ミチトは不思議そうに「なにしてるんですか?」と聞くとリナが「いや、嬉しいなって思ってさ、今聞いたらイブの指輪には特殊効果、ライブは沢山なんだよね。私達にもなにかあるの?」と返してくる。
「リナさんのは体調がおかしい日には魔水晶の色が濁ってわかるようにしたのと、簡単なヒールとリナさんが危険を感じた時には光壁術が展開するようにしましたよ」
このドヤ顔の説明にアクィが「出たわね、超過保護」と言って呆れる。
そんなアクィを見てライブが「ミチト、アクィの指輪にもなんかやったの?」と聞くとミチトは即答で「やってないよ」と返す。
またいつものアクィを困らせて喜ぶミチトが出たと思ってライブが「可哀想だよ?」と言うとミチトは「…アクィ、黙っとく?」と聞く。
アクィは「見せて良いかしら?」と聞き返してミチトが頷くと「愛の証」をテーブルに置いた。
「レイピアだ…」
「マスター、作ったんですか?」
「だからアクィの指輪は何もないんだね」
「アクィの奴、結婚指輪よりもレイピアって言うんですよ」
ミチトはヤレヤレといった顔で説明しているとメロがレイピアに触れながら「パパ、このレイピア作るの大変だったの?」と聞く。
「まあね、軽神鉄と隕鉄をアクィの身体に合わせて混ぜ込んで打ったし、装飾は全部手作業で宝石に見えるのは魔水晶。しかもある程度の刃こぼれに対する自動修復までつけたから大変だったよ」
「何時間くらい?」
「んー…4時間くらい」
「…それ、かなり早いですよね」
「ミチト、全部術でいいよって言われたら?」
「5分、それを手作りしたから大変だったし長く感じるよね」
アクィはニコニコとレイピアを持ち出して素振りをしては「凄い!思い通りに振るえる!」と喜ぶ。
その姿にライブがヤキモチを妬いて大変だった。
夕飯時、4人の結婚式を見てきたメロにミチトが教える形で広域伝心術を使わせる。
メロは範囲指定も間違えずに大鍋邸だけを覆えた。
リナが「うわ、アクィ似合ってるよ」と言うとアクィは「リナさんこそ綺麗」とお互いのドレス姿を褒めあい、イブが実物も見ていたが「ライブはやっぱり金色が似合いますねー」と言ってライブが「イブこそすごい似合ってるじゃん」と言って、妻達は口々にお互いを褒め合って最後にはミチトにありがとうと礼を言って終わる。
これで終われば良かったのだが、後日そうも行かなくなった。
突然ロキから王都に来てくれと言われたミチトは王都に着くなり激怒をする。
それは2つの理由があって1つはシックに頼まれた真式がアクィからイブまでの結婚式を広域伝心術で見せていた事だった。
ロキの家に呼び出されたシックと真式、余りの怒気にシックが言葉に困る中、ニコニコとしている真式に向かってミチトが「…お前、何で見れてるんだよ」と聞く。
「え?ミチト君の断次元術と奪術術、認識阻害術の応用で作った防壁は私にも突破は無理だよ」
「なら何で見たんだよ」
「昨日、メロさんに広域伝心術を使わせたよね?範囲は大鍋亭だけだったけど私は飛魂術って魂って言えばいいのかな?遠視術の延長でそれを飛ばして見聞きが出来るんだよ。ほら、ミチト君は遠視術と集音術だよね。私は遠視術の先に自分を飛ばすようにしたんだー」
真式は自分の術で何とかしたという。
聞いているロキからすれば何とかしてしまう人間同士の戦いでヒヤヒヤしてしまうし、さりげなくマテ達は屋敷の端に退避させている。
「じゃあお前は魂を大鍋邸に飛ばしてメロの伝心術に乗っかったと…」
「うん、そう」
「しかもそれを断りもなくシックさんに見せた?」
「え?でも後日なら見るのは良いよって…」
「メロならだ馬鹿野郎!」
「ええぇぇぇ…ごめんよ」
そして真式は更にやらかしていて、それが2つ目の理由だった。
「お前…もう魔水晶を含ませた布作ったのかよ」
「うん、凄くキラキラして綺麗でさ!私も作りたくなっちゃったよ!」
別に作れるものを独占する気はない。
だがこう早く流出されると面白くない。
ミチトはトラブルを未然に防ぐためにも流出させる気はないのに生まれてしまってシックが貰い受けた事に怒りを覚える。
今は誰も知らないが、約100年後この布が原因でトラブルが起きる事になる。
ブチギレたミチトを止めに入ったのはメロで、それは妻の誰がその場に乗り込んでも事態は悪化をするという判断でメロは「任せて!」と言ってロキの屋敷に転移をした。
怒るミチトに困っていたロキはメロの登場に「助かります!」と言ってミチトを任せる。
メロは丁寧にミチトの怒りポイントを聞いて、真式には覗き見をした事を注意してシックにはメロから見せるまでダメだと言う。
そして布の流出も「これで術人間を欲しがる悪い人とか出たら怒りますからね」と言うとようやくミチトは自分の言いたかった事を全部メロが言ってくれた事と、シックや真式がキチンと謝った事で怒りを収めていた。
シックはお詫びという事でミチトとメロを北部料理の店に誘う。
メロが行きたがった事でミチトも行くと懲りない真式が金色ことゴルディナと来る。
この瞬間にロキは辞退した。
これが完璧に良くなかった。
食事中、シックはミチトの機嫌が悪くならないように会話を選びながら「メロさんは素敵な結婚式を見てきたね」と言う。
メロもミチトの機嫌を考えながら「はい!パパとローサおばちゃんのお陰でママ達も喜んでました!」と返す。
ここまでは良い流れでミチトの機嫌は良い。
だが、ここで真式が「メロさんはどの結婚式が良かったの?」と聞いてしまう。
聞かれたくない質問に「え…」と返すメロと全部やり切って優劣をつけたくないミチトは「あ?」と言って真式を睨む。
緊張が走る店内。偶然だと思いたいが王都に暗雲が立ち込めてきて急な雷雨でも発生するのではないかと外の人々は走って建物に避難をする。
そんな中、メロは模範解答のように「メロはどれも良かったです」と言う。
真式はメロの愛らしさに目を細めて「そっか、メロさんの結婚式はどうなるのかなと思って聞いたんだよね」と言うとミチトがボソリと「メロ…結婚…」と言う。
雷雨どころか豪雨と雷と竜巻でも起きそうな中、空気を読まない真式は「メロさんの結婚式の時はミチト君にドレスと指輪を頼むといいね」と余計な事を言い続ける。
ミチトはメロの結婚に耐えられずに、遂には店は地震のように震えている。
しかも本人は無意識でメロが居なくなる事を考えて穏やかではない。
ちなみにトウテではアクィの力でこの惨状を見ていて皆が落としどころを考えて頭を抱えている。
これはマズい。
正直真式以外のメンバーには海底都市の恐怖が蘇る。
メロは会話に参加しないで愕然としているミチトに「パパ…?メロはまだ結婚なんて早いよ〜。パパが1番だよ!」と言うと天気は即座に回復し、地震はピタリと止み、ミチトは「本当?」と聞きながら今日1番の笑顔になる。
「本当だよパパ!パパは強いし優しいもん!ママ達が羨ましいよ!」
メロが畳み込むと真っ赤になって照れたミチトが「嬉しいよメロ、じゃあメロに近付く男は俺に勝てるかメロに勝てるくらいじゃないと…あ、帰ったら訓練しようかメロ!」と言い出す。
訓練が嬉しいメロは演技ではなく本気で喜び、それがまたミチトの機嫌を良くする。
更にメロは追い討ちで大鍋亭で待つ皆にお土産をシックに頼んでシックも快諾をするとミチトはメロの事があるのでニコニコと「いつもありがとうございますシックさん」と言う。
こうして無事に食事を済ませて土産を持って帰ったミチトを見送ったシックは「…怖かった」とアプラクサスに打ち明けていた。
余談…ではないが、大鍋亭では何も知らないように振舞う妻達はお土産に喜び、アクィが率先してメロとミチトをサルバンに誘って心いくまでメロとの訓練を楽しんでもらう。
そうして平和を得た後日、真式はアクィ達からコレでもかと怒られる事になった。
ミチトの結婚。~俺、器用貧乏なんですよ。外伝~ さんまぐ @sanma_to_magro
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