第14話 結婚式~イブ(アイリス)~。
結婚式4日目。朝一番に待ちきれずにソワソワとするイブの前にロゼを抱っこしたミチトが出ていき「イブ、ロゼとメロと来てくれるよね?」と聞く。
イブは必死にアイリスにならないように気を付けて「はい!イブの番ですね!楽しみでした!」と言う。
妻達は皆ご機嫌でイブを送り出す。
大鍋亭の玄関で「イブ、イブは最低限の人達だけにしたよ」とミチトが言うとイブは「はい!マスターの考えにお任せしますね」と言う。
イブとロゼとメロを連れてディヴァント邸に向かうとイブは「あれ?ロウアンさんのお屋敷ですね」と言う。
「うん。さあ着替えてきて」
「はい!」
ローサ達はイブを待っていてドレスを見せるとイブは「ふわふわのドレスです!」と喜んでみせる。
ミチトは早々と着替え終わってロゼの相手をしながらイブを待つとローサが「準備できたわよ」と呼びにくる。
ミチトはイブを見て自分の妻だと言うことを忘れて娘の結婚を見送る父の顔になりかけて慌てて表情を戻す。
そして前に出て「似合ってるよイブ」と声をかけるとイブはくるりと回って「嬉しいです!ありがとうございます!」と言ってミチトに微笑んだ。
ここでミチトはローサに目配せをするとローサは先にホールに行く。
てっきりローサと一緒に行くと思っていたイブは不思議そうに「マスター?」と聞くとミチトは「待ってて」と言って横に居るメロに「メロ、少しいいよね?」と聞く。
「うん。どうしたのパパ?」
「うん。ちょっとね」
ミチトはイブを見て「アイリス、今いいよね?」と呼ぶ。
アイリスと呼ばれたイブはすぐにアイリスになると「ミチトさん…」と言う。
今のイブはアイリスで同一人物なのに表情が違う。
「メロ、イブがアイリスになったのはわかる?」
「…うん。何回か見た事あるよ」
メロは敏感にイブの変化を察して気にしながらも普段通りにしてくれていた。
「そうだね。アイリス、メロに挨拶をして」
「はい」
アイリスはメロの前に立つと「はじめまして。って言うのも変かな?私はアイリス。術人間になる前の記憶。一度ミチトさんが死んだ時に思い出された記憶」と名乗る。
「イブお姉ちゃんはアイリスお姉ちゃん?パパが一度死んだのはメロと会う前だよね?じゃあイブお姉ちゃんは9年もアイリスお姉ちゃんを隠してきたの?」
メロの質問にアイリスは少し申し訳なさそうに「うん。初めて会った日はもうアイリスも居たイブだったよ」と言う。
「凄いね…」
「ふふふ、ローサさんの後継者の1人だからね」
アイリスと話したメロは「なんかイブお姉ちゃんよりママって感じがするよ」と言うとアイリスは嬉しそうに「そうかな?ありがとうメロちゃん」と言って優しく微笑む。
イブの天真爛漫な笑顔とは違う笑顔。
それを見たメロは「じゃあ…アイリスママ。結婚おめでとう」と言うと、アイリスは目を潤ませて「ありがとうメロちゃん」と返した。
「今日の結婚式はイブとだけではなくアイリスともしたかったから人を集めないでこの屋敷で行いたかったんだ」
「うん。ドレスを着てる時に誰がくるかをローサさんに聞いてそんな気がしていたよ」
「ティナさんにはまだだったよね?」
「うん。後はロウアンさんとヨシさんかな。皆存在には気付いてくれてるけど黙っていてくれてるよね」
「じゃあ一度イブに戻ろうか?」
ミチトの言葉で「はい!」と言ってイブに戻るアイリス。
ミチトはその時の気分で「イブになる」「イブに戻る」「アイリスになる」「アイリスに戻る」を使っていて、今はイブに戻ると言っていた。
表情の変化にメロが目を丸くして「わぁ…同じ顔なのになんか違うのがわかるよ」と言うとイブは「ふふふふふ。イブは出来る子なんですよー」と言ってメロの姉のようにはしゃいで見せた。
メロがロゼを抱いて先にホールに入ってミチトとイブを待つ。
そして入場してきたイブはニコニコ笑顔のイブでティナは「イブちゃん可愛いわ!リナより可愛い!」なんて言っていてイブは「はい!」と言っている。
サミアから呼ばれた神父はまた新郎がミチトで一日ぶりだがツッコミを顔に出さないように必死だった。
それでも式は滞りなく進み、ミチトが「イブ、指輪を作ったんだ」と言うとイブは「はい!ありがとうございます!」と喜ぶ。
ミチトは指輪を出すとイブの指にはめる。
それは愛らしいデザインの指輪だった。
「マスターは何日も寝ないでこれを作ってくれていたんですね」
「うん。どうかな?」
「凄いです!」
「ありがとう」
ミチトとイブは見つめ合って微笑み合う。
少し長目に微笑みあった後でミチトが「じゃあイブ、今ならなれるね?」と聞く。
イブは周りを一度見てから「はい。ミチトさん」と言ってアイリスになる。
周りも察してはいるので誰も何も言わずに式を見守る。
ミチトは「アイリス、説明は後でね」と言うと「今はこれ、その指輪を外して」と言って着けたばかりの指輪を指して言う。
アイリスは「え?」と言いながらも言われるがままに指輪を外すとミチトは落ち着いた雰囲気の指輪を出す。
イブの指輪には空色の魔水晶がついていたがもう一つには濃い暗めのピンク色の魔水晶がついていた。
指輪を見るアイリスに「これはアイリス用の指輪だよ」と言う。
「え?ミチトさん…これ…」
「うん。いつもありがとうアイリス」
ミチトはアイリスの手を取って指輪をつける。
アイリスはイブとしてではなくアイリスとしても指輪を貰えたことに「嬉しいよ」と言って泣く。
泣いているアイリスにミチトは「アイリス、さっきの指輪を貸して」と言う。
アイリスはまた何を言われたかわからずに困惑しながらイブの指輪を渡すとミチトは手に取って真剣な表情で「…イメージは出来ている。術を流す…。二つで一つ。形は崩さない。でも合わせる…。名前は…そうだ…融合術だ…」と言うと二つの指輪は一つになる。
「アイリス、イブになってみて」
「え?うん」
アイリスはイブになったのだろう。指輪がイブの指輪に変わっていた。
イブは左手の指輪を見て「わ…指輪が変わりましたよ?」と驚いた後で「マスター、また変な事をしましたね」と言って変な顔をした。
ミチトはいつもの表情で「酷いなぁ」と言って笑う。
イブは試すようにアイリスになると指輪はアイリスの指輪になるのでアイリスが困った顔で「これじゃあバレちゃう」と言う。
「ダメ?」
「んー…素敵だからいいけど…」
ミチトはアイリスのドレスを指輪に合わせたピンク色に染め上げて皆にアイリスを紹介する。
ティナもロウアンもヨシも知らぬ振りをしてくれていただけなので挨拶は簡単に済み。ティナはそれでも知らぬふりを守っていて「やだ嬉しいわ!娘がもう1人いたのね!」と喜んでくれる。
「どうしてもアイリスは外に出せないので今日は少人数にしました。ローサさんは察してくれてありがとうございました」
礼を言った後は少人数での会食になる。
指輪のせいでアイリスが所々でイブとアイリスを使い分けていた事が判明したので即日ミチトはそっくりな指輪を用意してイブに渡すことにした。
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