Ⅲ
何の変哲もない2020年代後半の話。
午後5時半、カチカチという硬いものが音がぶつかり合う音が2、3度閑静な住宅街に響く。響いたところでそこの住人は誰一人として気にしない。しかしして、ここはかちかち山ではなかった。
中年夫婦がジョギングをしている。ペースを崩さず、毎日続けているのだろう。ひたすらに淡々とこなしている。追ってみれば町の中心の八角形の建物にたどり着く。そこには活発な八百屋と肉屋があり、爺婆が時間を消費する場所にしている。
老人ホームがあり、
しかしこの町には産婦人科はない。
終わりと、そこに向かうための施設が十二分にある町。不気味で、生産のみが欠落した気持ちの悪い町だ。
だが、火葬場はない。墓場もない。終わった後は他に任せる、そんな町だ。
住人達はそれを笑いながら語る。
「隣町にあるものなんて火葬場と墓場くらいかい?」
「中古品を取り扱う店くらいならあるよ」
「老人ホームしかないここよりは幾分かましらしいな」
そんな街で僕は、火打ち石を毎日打っている。
短編 @14go
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