第2話


 きよらさんの住んでいる山口家は、なかなかご立派な和風住宅だった。門から見えるお庭も広そうだ。


「ご家族の皆さんは、ここにお住まいなんですよね?」


「ええ。おばあさまと、お爺さまはこちらに。私は、もう少し庭を進んだ先の離れに家族三人で住んでいます」


「なるほど」


 きよらさんが住んでいるという離れは、母屋とは違い、白一色の洋風な建物だった。庭の裏口とも近い立地。こっそりと裏玄関から入れば、友達とホームパーティーもできるはず。


「へぇ、普通の家って憧れるんだよね。狭くて落ち着きそうじゃん?」


 勝手についてきた虎次郎さんは興味深々にきよらさんの家を見ている。そりゃそうか、虎次郎さんのご自宅超豪邸だもんね。


 早速私たちは問題の洗面所に向かった。少し広めの洗面所は、大きな鏡に、シャンプードレッサーが二つついている。清潔感の漂う洗面所には、紫色の蘭の花が飾られていた。


「ここに置いたんですけれど」


 きよらさんがそう言って示した場所は、本当にただの洗面所の台の上だった。余計なものは置いていないから、きっと何かに紛れてしまったということはないだろう。


「無くなるような場所じゃないですよね」


「そうなんです。本当に、ちょっと自分の部屋に一瞬戻った隙になくなっていて」


「その時に自宅にもうきていた友人とは? 誰なんですか?」


「確か、かなえちゃんと、たけるくんだった気がします」


「その指輪をくれた初恋の相手の健ちゃんはまだいなかった……。ということでいいんですね?」


「はい」


「残念! 俺の推理はその健ちゃんだったんだけどな」


 虎次郎さんがそういうけれど、私も同じように推理していた。となると、そのかなえさんとたけるくんのどちらかが怪しいということになる。


――もしかして、三角関係?


「幼馴染みのご関係としてはいかがなのですか? 例えば、かなえさんが健さんを好きだとか、たけるさんがきよらさんのことが好きだとか?」


「ないない! そんなものはないです! みんな本当に普通に仲がいい幼なじみっていうだけで!」


「でも、それは幼い頃の話で、もう今はみなさん高校生ですよ? しかも普通に考えて親について一緒にきますか? 余程親同士が仲良くて子供同士も仲が良くなかったらまず考えにくい状況かと」


「でも、本当にそんな感じなんです。来週もみんなでキャンプに行く予定ですし」


 思わず私と虎次郎さんは目を合わせた。


「そこだ! その時に犯人を見つけ出しましょう!」


 私と虎次郎さんはきよらさんが幼なじみと一緒に行くキャンプについて行くことにした。


「この事件、謎道一族の名にかけて! 必ず解決して見せます!」



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