第880話 確かにDX化で便利にはなっている。

当院では、患者さんの「時間外」の看取りについては、「タクシーを使っていくこと」というルールがある。ところが、往々にして、呼び出された時には「タクシー」が捕まらないことが多かった。


そうそう「看取り」での呼び出しはないことだが、一度「土曜日の23時ころ」に「看取り」の依頼があった時は、タクシー会社に連絡しても、一向にタクシーが来なかった。50分近く待っただろうか、「これなら歩いて行ってもよかったんじゃないか?」と思うほどだった。ただ、「土曜日の23時ころ」と言えば、タクシーにとっては「稼ぎ時」だろう。タクシーが捕まらないのも如何ともし難い。その時は、事務当直のスタッフが、外来当直の看護師さんと相談して、いったん事務当直の方に抜けてもらい、病院車を運転してもらって患家に連れて行ってもらったことを覚えている。


また別の機会、これは月曜日の未明(日曜日の深夜)だったが、これもタクシーが捕まらなかった。たぶんその時間が、週の中で一番活動している人が少ないのだろう。タクシーもそれに合わせて運用台数を減らしているのだろう。このときも40分ほど待った。このときはタクシーが来てくれたので、タクシーを利用した。


このような、「タクシーが捕まりません」トラブルを避ける目的が一つ、地域のタクシー会社が民事再生法の適応、となってしまったので、さらにタクシー不足に拍車がかかったので、「物は試し」と、アプリ「Taxi GO」をインストールした。


この前の日曜日、看取りの呼び出しに対応したが、その時に初めて「Taxi GO」を使ってみた。病院について、すぐにアプリを開くと、自分の現在地と、「タクシーを呼んでから、タクシーが到着するまでのおおよその時間」が表示されていた。表示は「0~5分」となっていた。なんという事だ。日曜日の午前7時過ぎ、多くの人は眠っている時間である。当然タクシーも捕まえにくい時間である。なのに、表示がそのようになっていた。


「マジか…」


と思いながら、タクシーを呼んでみた。「タクシーを探しています」の表示が10秒ほど出ただろうか。すぐに「7時29分頃にタクシーが到着します」と表示が出た。その時、時刻は7:25。ここから医局に向かって、着替えて、としていたらあっという間に時間が来てしまう。事務当直のスタッフに、「すみません。もし私が下りてくる前にタクシーが到着したら、待っててもらってください」と伝えて、大慌てで医局に向かった。


お医者さんセットをもって、病院玄関に戻るとちょうど7:29だった。事務当直の方に聞くと、まだタクシーは来ていない、とのことだった。病院の正門が閉まっていたので、「では、病院の前で待っています」と伝えて、病院入り口前のベンチに腰を掛けると同時に「タクシーが到着しました」とスマホに表示が。と、間髪を入れずにタクシーがやってきた。


自分の名前を名乗って、タクシーに乗り込む。状況を話して、「私が道案内をします。私を下ろしてもらったら、私が戻るまで待っててもらえませんか?もう一度病院に戻ります」と伝え、患家に向かう。一連の仕事を終えると、タクシーは待ってくれていた。再度タクシーに乗り込み、病院に戻る。タクシーがすぐ来てくれたら、看取りの対応そのものに少し時間をかけたとしても、あっという間に仕事が終わる。今まで、40分とか50分待っていたのは、いったい何だったんだろう?と思うほどであった。


Uber Eatsとか、出前館とか、使ったことはないが、今回の「Taxi Go」は本当に便利だった。下手に「タクシー呼び出し電話」を使ったりするよりうんと早かったような気がする。


便利な世の中になったものだ、と感動した。民間のアプリでもシェアの高いものは、しっかりしているものである。なおさら、「官製」のアプリのできの悪さにがっくりとしてしまう次第である。

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