第877話 「正義」を担保すべき組織がそんな考え方なら、潰してよいと思う。

平日の朝は慌ただしいので、朝刊と夕刊を仕事から帰宅してから続けて読む私である。今朝の読売新聞1面には非常に衝撃的な記事が記載されていた。


2019年参院選を巡る河合克之元法務大臣が地元政治家100人に計約2900万円の買収資金を提供した、大規模買収事件について、現金を受領した地元政治家を取り調べた、当時東京地検特捜部検事の男性が、同新聞の取材に対し、「不起訴をほのめかし、客観証拠に沿うよう供述を誘導したことがある」と証言したそうである。


この事件では別の検事が元広島市議に不起訴を示唆して自白調書に署名させた疑惑が問題化したそうである。今回の記事では、その検事とは別の検事も「特捜部の描いた構図」に従って「自白獲得に奔走していた」と明かしたそうである。


取材を受けた男性は、組織として「不起訴をにおわせろ」という指示を受けたことはなかったが、周囲の検事からは「河合夫妻以外はどのみち不起訴だ」と聞かされていたことを証言しており、実際に検察当局は被買収側を全員不起訴としている。ただし、実際は検察審査会の起訴相当議決を受けて、34人が在宅・略式起訴となっている。


当時は、被買収側の100人が全員不起訴となったことに対して、「証言に対する裏取引があったのではないか」という疑いが広がり、読売新聞の取材で、被買収側であった木戸 経康元広島市議が、ひそかに録音した検察の取り調べのデータを入手、公表したことで問題となった。取り調べの様子が詳細に録音されており、最高検察指導部が内部調査に乗り出し、木戸元市議の取り調べに関わった検事二人を「指導」としたが、「組織的な指示はなかった」としていた。


今回取材に応じた男性は、東京地検特捜部内では、どの検事が誰の自白を得たか、という進捗表を一覧表にしていた、と語っていたそうだ。検察幹部は、「組織として捜査を効率的に進めるためには、容疑者の認否を管理するのは通常のことだ」と取材に答えているそうだが、現場では、この一覧表はある意味「星取表(成績表)」であり、各検事の「成績」が一覧となっている、というものになっていた。組織内では、「自白をたくさん撮れた検事が『優秀な検事』と認識」されており、取材に応じた男性は、この「星取表」を見て大きなプレッシャーを感じていたそうだ。この男性だけでなく、所属する検事がほとんどみんな、同じような認識を持っていたそうだ。ここでいう「優秀な検事」がいわゆる「出世」をしていくわけである。


取材に応じた男性は、「星取表」については、「その存在が不適正な捜査につながったといえるだろう」と答えている。最高検察指導部の調査結果については、「組織の問題を認定してしまったら、『特捜部』そのものが解体となってしまう。個人の責任にとどめることは容易に想像できた」との見方を示しているとのことである。


自民党の裏金問題では、「全く」と言っていいほど存在感のなかった検察庁である。しかしながら検事は全員、司法試験に合格した人たちである。


「裁判官」を選択した司法試験合格者は、「自身の判決」の独立権を認められている。


「弁護士」は色々な働き方はあるが、自分の信念を貫いて仕事をしている人も少なくはない。


「検察官」が「検察庁」という組織に属し、「組織人」として、自身の正義感、独立権よりも、「組織人」としての振る舞いを強制され、それが「不正」につながる、ということであれば、「特捜部」は解散すべきである。「正義」を守る組織が、「正義」ではなく「組織」を守るために不正を犯すようであれば、存在意義を失うわけである。最高検察指導部も、結局「正義」よりも「組織の維持」を優先したわけだ。


「難関」と言われる司法試験に合格した人たちで構成されている「検察庁」がこの体たらくでは、誰が「正義」を擁護するのであろうか?「不正」を追求するのであろうか?


「特捜部」にはびこる「官僚気質」、どのように排除していくことができるのだろうか?いみじくも検察幹部の発言、「組織として捜査を効率的に進める」という言葉が出る時点で、本来はおかしな発想であることに気づかなければならない。捜査を進めるのは「効率的に」ではなく、「正確に」であるべきなのだ。エリートたちの集まりであろう?なぜそれに気づかない?


このような記事を報道できる、という点では「さすが読売新聞」というべきであろう。このような社会問題を提起することは「報道機関」の本来果たすべき仕事であり、そういう点で、今朝の朝刊は読みごたえがあり、考えさせられる記事であった。


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