第876話 「共同親権」をデフォルトにするのはどうだろうか?

先日、「共同親権」の導入などを柱とした「民法」の改正法案が賛成多数で可決成立した、というニュースがあった。


改正法案では、離婚する父母の協議で「共同親権」もしくは「単独親権」を決定し、合意が得られなければ家庭裁判所で「親権」の在り方を決定する、という事になる。ドメスティックバイオレンスや虐待が離婚の原因となっている場合には「単独親権」という事になる、という事である。


「共同親権」に賛成の人もいれば反対の人もいる、というのは道理であろう。「単独親権」の場合に起きる悲劇もあれば、「共同親権」ゆえの悲劇、というものも存在するからである。


昨年だか、福原 愛氏の「子供を返さない」事件がニュースになった。この夫婦が離婚した際には「共同親権、養育は父である江氏が行なう」というルールであったにもかかわらず、面会に来た長男を、約束の期限をうんと超えて福原氏が留めていた、という事であった。


当初「離婚の際に結んだ協定」が、のちに守られなくなる、という事は珍しいことではない。日本では現状、圧倒的に母親に親権が付与されることが多いので、離婚時に「養育費・面会」のルールを定めても、小さな子供に母親が、父親のあることないことを吹き込んで(母親からしたら、「顔もみたくない嫌な相手」であろう)、子供に誤った認識を刷り込み、養育費は父親が誠意をもって支払っているにもかかわらず、子供側から面会を断られたり、振り込んだ養育費はその子供の養育ではなく、別の用途に使われていたり、という話はよく聞くものである。


また逆に、「面会」のルールを母親が守り、子供を父親に合わせたら、子供ごと父親が無理心中をしてしまう、というニュースも聞いたことがある。


私個人としては、「共同親権」を基本とし、「単独親権」を選択する場合には、家庭裁判所がしっかりと介入し、それが妥当、と判断したうえで「単独親権」とすること、親権者は原則「父母」という事になるが、「親権の代行者」として、児童相談所の「親権代行部門」を作ったり、あるいは弁護士など、有資格者が代行することを可能にして、第三者の目が入るようにすること、「親権の代行者」として弁護士が介入する場合には、弁護士の本来の目的は「依頼人の利益の最大化」ではあるが、この場合に限り「親権を行使する『子供』の利益の最大化」を旨とすること、など、考慮すべきことがたくさんあるだろうと思う。


現在の日本では「母親が単独親権を持つ」ことが極めて一般的であるため、そのことに注意を払ってデータを解釈するべきではあるが、「小児の虐待死」で「虐待の主体」となっているもので一番多いのは「母親」である。養育費の不払い率は父→母への不払い率が60%台だったことに対して、母→父への不払い率は80%台、という事にも注意を向ける必要がある。もちろん、男性と女性の賃金格差があるので、この結果については、その解釈に極めて気を使わなければならないことであるのは事実であるが、少なくとも「統計学」的には、このような結果が出ているわけである。


子供がある程度成長した時点で、子供の自己選択権をある程度尊重する必要があると思うが、それまでの間、離婚した夫婦の関係が悪いほど、その子供については、「客観視できる第三者」が「親権の代行者」となることができるような法整備が必要ではないか、と思ったりする。


ただ、考え始めると、「離婚」はしていないものの、「夫婦」としての関係が完全に破たんしてしまっている、いわゆる「仮面夫婦」の間の子供に対しても、本来なら、同様に「自己決定権」が行使されるまでの間の「善意の第三者」が介入する必要があるだろう、とも思う。


となれば、相当の人手と、手間と、お金を掛ける事業となってしまうわけである。「責任をもって子供を育てる」という事はとても大変なことである。ただ願わくば、子供たちみんなが「心穏やかに」「自己肯定感を適切に内面に育てながら」成長していくことをサポートできるような制度設計ができればよいなぁ、と思う次第である。

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