第875話 さてはお前は「大阪人」だな?!

過日、「浪花のモーツァルト」として親しまれていた、作曲家のキダ・タロー氏が永遠の旅に出られた。ご冥福を心よりお祈りする。


私が高校生のころからだから、もう35年ほど前か?関西ローカルで「探偵ナイトスクープ」という番組が生まれた。「視聴者からの「アホらしい質問」に、徹底的に「真剣に向き合う」という面白さが評価されたのか、今では全国放送されているそうだ。氏は「特別顧問」と自称し、登場されていたことを覚えている。


この番組では、「大阪人の特徴」について、何度か取り上げていたことを覚えている。例えば、道を歩く知らない人に向かって、指で鉄砲の形を作り「バーン!」と撃つ真似をする。そこで、「うーっ!」っと撃たれたリアクションをとっさに返す人は「大阪人」、なんてことを検証していた。


私が秀逸だ、と思っているのは、「とれとれピチピチ カニ料理」と書いたボードを見せて、「これを読んでください」、というものであった。


関西ローカルの会社なのだと思うが、「かに道楽」というカニ料理のチェーン店がある。そのCMソングも氏の作品なのだが、一番耳に残る、あるいは一番強調しているフレーズがこの文言である。私も子供のころからテレビを見ていて、「と~れとれピチピチ カニ料理~♪」は魂の底に刷り込まれているようである。YouTubeで「かに道楽 CM」で検索すれば、容易に見つかると思う。一度聞けば強く印象に残るフレーズであり、それを私たち関西人は何百回と聞いてきたのだ。


どこで取材をしたのかまではもう記憶にないが、感度、特異度ともに100%で、このCMが流れていない地域の人は、普通に音読し、CMが流れている関西の人は「と~れとれピチピチ カニ料理~♪」と歌っていた。氏の影響力、極めて大である。


日清食品はもともと大阪の会社なので、私が子供のころからのロングセラーである「出前一丁」のCMソングも、氏に依頼が来たそうである。クライアントからは商品名の「出前一丁」という名前しか情報をもらえなかったそうで、苦労した挙句、「あ~らよ!出前一丁~♪」というフレーズを作ったそうだ。これは全国の皆さんがご存じのフレーズだろう。


1990年代に、大瀧詠一氏が、「出前一丁」のCMに、彼らしい曲調のCMソングを作ったが、その曲の終わりは、キダ・タロー氏の「あ~らよ!出前一丁~♪」であった。


子供のころから当たり前のようにおられたキダ・タロー氏、最近どうしているのかなぁ、相当なご年齢だし、お元気にされているのかなぁ、と時々気には掛けていたが、天寿を全うされたようである。


繰り返しとなるが、心よりご冥福をお祈りするとともに、また一人、時代を代表する人が亡くなった寂しさを感じる次第である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る