第873話 それはちょっと問題のある文章では…?

今日の読売新聞朝刊の「編集手帳」。主なテーマは「カメムシ」の大量発生についてだったのだが、最後の段落に「えっ?」と思う文章があった。


<以下引用>

この頃、生き物に驚かされることが多い。東京都心の歩道橋にハチがわんさか群れていたり、山手線車内でアオダイショウの子供(約20cm)が這いまわったり。


<引用ここまで>


多分、筆者は都会育ちで、あまり生物に興味がない人なのだろう。新聞社の人だから、いわゆる「文系」の人で、生物学的素養の無い人なのだろう。


この時期、ハチが一か所に一時的に集まるのは、「分蜂」と言って、女王バチが代替わりして、古い女王バチが新しい巣をつくるために、もといた巣を離れ、一時的に集団を作り、働きバチが新しい「巣」を作るに適した場所を探している最中のことである。


2,3年前にも東京23区内で、歩道のそばの生け垣に「分蜂」していたハチがニュースになっていたような記憶がある。確かニュースでは、害虫駆除業者さんが殺虫剤を撒いている映像が流れていたように記憶しているが、たしかに「人間」にとっては困ったことではあるが、それは自然のことであり、ミツバチの分蜂であれば、よほどちょっかいをかけなければ、人を襲うことはないとされている。


東京は確かに都会ではあるが、大阪と比べると緑が多い印象である。大きな「皇居」であったり、いろいろな公園が整備されているせいなのだろう。私が育った実家周辺は、かなり住宅化がされていたが、それでも時々ヘビを見かけたことを覚えている。住宅や工場、倉庫などが並んでいる街の中にも、「ヘビ」が命をつないでいく隙間はあるのだろうと思う。最近は「爬虫類」をペットとして飼育する人も少なくはなく、山手線に乗っていたヘビを見た人の中には、一目で「あぁ、アオダイショウだから騒がなくてもよかろう」と思った人もいたのかもしれない。


文章の流れの中では、「分蜂したハチ」も、山手線の車内で見つかった「アオダイショウ」も「忌避すべき」もののような印象を受けるのだが、「ハチ」も「アオダイショウ」も、私たちと同じように、東京の街で暮らしていたのである。「忌避」すべきものでも「駆除」すべき対象でもない、と思うのだ。


という点で、「新聞の顔」ともいうべきコラムで、コラムニストの見識不足が露呈してしまったように感じてしまった。タイトな時間で書き上げなければならないので、筆をとる人には厳しい注文かもしれないが、「ハチの群れ」も「アオダイショウ」も、特にハチの群れについては、ハチの生態を少し調べてから筆をとるべきであったのではないだろうか、と思った次第である。

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