第871話 気付いてぇなぁ…。

私の仕事が朝方にシフトしており(多くの曜日で7:00~16:00(1時間サービス業務を含む))、子供たちの学年も上がってきたので、一番最初に帰宅するのが私、という事が増えた。その流れで、私が一番風呂をいただくことも増えてきている。


私が子供のころは、「一番風呂は浴室も寒く、お湯のあたりも強いので、若いものが先に入浴し、浴室が温まり、お湯も少しまろやかになったところで年配者(おばあちゃん)が入る」というルールだったので、「一番風呂が贅沢」とか、そういう理由ではなく、なんだかんだと他の理由で、一番風呂に入れてもらっている。


先日も私が一番風呂をいただいた。最近は夜も少し暖かくなってきたので、上は寝巻代わりのTシャツ、下はスウェットのズボンをはいて、入浴後は過ごしている。家族みんながお風呂に入り、そのあとで夕食。夕食を食べた後、少しウダウダする時間を過ごし、寝る前の歯磨きのために洗面所に向かった。


洗面所に映った自分の姿を見てびっくりした。Tシャツを表裏逆に着ていたのだ。ユニクロで買った、白地で胸のところにフォルクスワーゲンのマークが入ったTシャツなので、デザインは表裏逆でも分からない。ただ、当然のことながら、表から見るのと裏から見るのとでは、見え方が異なる。


「わーっ!今まで逆に着ていたことに気づかへんかった!」と思わず叫んでしまった。入浴後から5時間近く経っていたのだ。夜のことなので、家族としか顔を合わせていないが、大急ぎでリビングに戻り、2人の息子たちに、


「父ちゃん、Tシャツ表裏逆に着てたやん!気がついてたら教えてよ!」


と言いながら、子供たちの前でTシャツを脱いで正しく着なおした。


子供たちは大笑いしながらも、「ごめん、今、父に言われるまで、裏表が逆になっているの、全然気づかへんかった」とのことだった。子供たちの様子を見ると「父、Tシャツ反対に着てるなぁ。全然気ぃついてへんわ(気がついてないわ)」と生暖かい目でニヤニヤと見ていたわけではなさそうだった。本当に気がついていないようだった。


とりあえず歯磨きを終わらせて、彼女の部屋でくつろいでいた妻に、「お風呂あがってから、今さっきまで、Tシャツを表裏逆に着てたわ。子供たちも気がついてなかった」とぼやきに行った。


「えっ?そうやったん?私も気がついてないわ!」と、妻も気づいていなかった。


誰しもが、見ているようで見ていないのだなぁ、と思った次第である。

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