2024年 5月

第858話 やはり「口コミ」は気になるところ

「グーグルマップ」に不当な「口コミ」が登録されており、削除を依頼しても対応してもらえない、とのことで、都内のクリニックの医師ら63の個人、団体がグーグルを相手に損害賠償請求を東京地方裁判所に起こしたことがニュースとなっていた。


この数年来の「食べログ」の口コミ問題などで、あまりネット上の口コミは信用しないようにしているのだが、それぞれ、医療機関にも「口コミ」がGoogle Mapの機能で書き込めるとは知らなかった。


一度知ってしまうと、今従事している勤務先や、以前の勤務先にどのような評価がついているのか、気になってしまった。ということで、ちょっと覗いてみることとした。


今の勤務先の口コミを時系列で見てみた。そんなにたくさんの口コミがかかれているわけではなかった。時期を見ると、まだ「発熱外来」の対応をしていたころの口コミがパラパラとみられ、「受付の対応が悪い」とか、「朝一番で連絡したのに、ずいぶん遅い時間の診察枠になった」というものが見られた。確かに「発熱外来」対応をしていたころは1日に7枠しか発熱外来枠を設けていなかったので、致し方ないところはあるが、それほど「理不尽」なコメントは見当たらなかった。「狭い土地の、新しくはない病院だが、中は清潔に保たれていて好印象」というコメントはありがたかった。随分古い口コミも見つかって、「これは今の状況とは全く違うなぁ」というコメントもあったことはしょうがない。


あまり良くないとは思いながら、以前の職場の口コミも覗いてしまった。「我田引水」というわけではないが、私が勤務していたころの口コミは「好意的なもの」が多かった。しかし、最近のものを見ると、「以前と比べて…」というようなものが多くて大変残念に思った。


中には医師の実名を挙げて、厳しい批判をしている書き込みもあった。文面からはかなり強い憤りが感じられ、内情を考えても「口から出まかせ批判」とは到底思えなかった。う~ん、「信用を築くには時間がかかるが、信用を失うのは一瞬」というのは本当だなぁ、と思った。


「院長とは別の医師が辞めてから、ずいぶん雰囲気が悪くなった」という口コミもあった。H25年に恩師が病気で外来から退いてから、外来は3人で、しかも、一人は恩師と同年代、80代だったので、外来枠を減らし、基本的には朝と夜の外来は院長(理事長)と二人、午後の診察は私が担当していたので、「院長とは別の医師」というのは私のことかもしれない。


私が退職する3か月前に80代の先生も退職され、常勤医は院長一人になってしまったので、まぁ、確かに雰囲気は悪くなるだろうなぁ、とおもったりした。


「薬をもらうだけならこのクリニックでいいが、体調が悪い時には使うべきでない」という口コミもあった。これは私が勤務していた時にも、看護師さんを経由して、


「薬をもらうだけの診察なら、理事長の外来に。体調が悪かったら、保谷先生の外来に」


と患者さんが言っておられる、とよく聞いていた。なので、そのような口コミも故無きことではないのだろう、と思ったり。


前職場でも、今の職場でも、「学んできたことを忠実に、他人への敬意を忘れずに、誠実に」医療を行なっているつもりだが、この「当たり前」のことを「当たり前」にすること、大切なのだろうなぁ、ということと、やはり医療機関にとって、「医師」の存在って大きいのだなぁ、と思った次第である。

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