第848話 「カネ」しか見ていない人が口を出すと、ろくなことがない

これも昨日のニュースだったように記憶しているのだが、「財務省」が、「へき地医療の人材不足」に対して、都心の診療報酬を下げることで、医師の分散化を図る、と提案したことが報じられていた。


確かこのニュースはネットで読んだと記憶しているが、コメント欄には1000件以上のコメントが寄せられていた。多くのコメントは否定的な意見で、「都心の診療報酬を下げる、という事は、都心に住む人が窓口で支払う金額も減りますよね。余計都心に人が集まって、へき地はどんどん限界集落化するんじゃないですか?」というものが多かった。私もそう思う。


開業している医師が、自身の診療所・クリニックをたたむのは、長年通ってくれていた患者さんを見捨てるような思いがして心苦しいところがあるだろうが、「経営が成り立たない」となれば如何ともし難い。地域の中核を担う病院は基本的には「赤字」であろう。たくさんのスタッフを雇用して、濃厚で先進的な医療を行なえば行うほど、構造的に「赤字」になってしまう。となると、都心部は「人は多いが医療は薄く」なり、それなりに便利な「地方の中核都市」が一番医療については充実し、いわゆる「コンパクトシティ」化が、診療報酬で実現するかもしれない。


厚生労働省は、医系技官もおり、第1種国家公務員も、専攻が「薬学」など、ある程度医療にかかわる学問を修得してきた人が「役人」となっているので、多少は、「医療者側」のことも考えてくれているわけである。その塩梅は見事で、今回の診療報酬改定についても、見た目は「プラス改定」となっているが、プラスにしようとするとハードルが極めて高く、本質的にはマイナス改定となっている。医師会側、財務省側の両方の顔をうまくたてたのだ。


これは個人的な偏見かもしれないが、「人のお金を扱う仕事」についている人は、言葉は悪いが「お金に汚い」印象がある。私の経験例だけを挙げて議論するには事例数が少ないので、エビデンスは全くないが、嫌な思いはそれなりにしてきた。


財務省も、お金だけを見て、その向こうに人の生活であったり、健康であったり、時には変な矛盾があったり、という事を見ていないんだろうなぁ、と、今回の表明で思った次第である。


因みに、たくさんのコメントの中で、「医者は全員公務員にして、国が強制配置、給料は半分とすれば、医療費の問題は片付くだろう」というものがあった。


①配置期間に制限を置くこと(本人が希望すれば延長は可)、②年俸制給与システム、宿日直許可を廃止し、労働基準法に則った時間外手当を支給すること、③明らかな悪意や明確な技術不足によるものを除いて、医療行為に伴う患者さんへの不利益に対しては免責(善良な意志をもって行なった医療行為によって、患者さんが死亡、ないしは後遺症を発症したとしても、医療従事者の罪を問わない)、④医療従事者に対する暴言、脅迫、暴力は速やかに処罰の対象(これは法律上は今でもそうなっているはずなのだが)、の4つを完全に満たしてくれれば、給与半額でも構わないと個人的には思っている。


ちなみに、新聞とともに入っている求人広告で、パートの看護師さんの時給が2300円くらいである。仮に医師の時給もその程度と仮定して、私が一番働いていた時は週の労働時間が110時間くらいだったので、2300円/日×110時間×52週(お盆休みはなく、GW、正月は24時間当直が待っていた)で、年収1315万6000円である。本当は、時間外、深夜勤務は割り増しがつくのでもう少し金額は上がるはずである。自分の給料も年俸制だったが、まぁ、それくらいだった(時間外、深夜勤務の割り増しはなかった、という事か?)。


看護師さんの持っておられる技能、技術、業務量を考えると時給2300円は高くないと思われる。医師の時給が看護師さんより高くなるかどうか、そこについては仕事の質、内容が異なるので単純比較はできないと思うが。

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