第816話 記事にならない何かがあるのでは、と思う。
ソースは南日本新聞、2024.3/28の記事より。医学生時代定期購読していた新聞である。
<以下引用>
鹿児島県議会の小園成美議員(自民・指宿市区)が指宿市で運営する高齢者福祉施設が、医師の処方箋なしで抗寄生虫薬「イベルメクチン」を利用者へ投与していたことが27日、分かった。イベルメクチンは国内では医師の処方が必要な薬のため、「法令違反であったことは明らか」として、おわび文書を施設のホームページに同日掲載した。同施設によると、健康被害は確認されていない。
施設は同市のグループホーム「すもも」と「すももの里」。小園議員によると「2023年10月ごろに利用者への投与があったのではないか」と外部から指摘があり確認した。文書では「処方箋なしでイベルメクチンを投与したことは事実だった」と謝罪した。「並行輸入品として入手できていた」と説明した。
新型コロナウイルス感染症に効果があると考えて投与した。「職員も入居者も感染する大パニックだった。入居者の生命を守れるとわらにもすがる思いで実行した」とした。
小園議員は26日、「イベルメクチンは自分と家族が飲むために医者の友人から譲ってもらい、個人事務所に保管していた」と説明していた。
厚生労働省によると、イベルメクチンは腸管糞線虫症や疥癬(かいせん)に効能があるとして「処方箋医薬品」となっている。肝機能障害などの副作用がある。コロナ流行初期から効果の有無について国内外で研究された。国は23年8月、新型コロナの「診療の手引き」で「有効性が示されず、使用すべきでない」と位置付けている。
医薬品の品質や安全性に関する医薬品医療機器法に詳しい松下朋弘弁護士(東京)は「イベルメクチンは医師の処方が必要な薬。輸入、薬局など、どのルートから仕入れたとしても、他人に渡すことは法に抵触する」と指摘する。
<引用ここまで>
極めて違和感の強い記事である。COVID-19に対する「イベルメクチン」騒動、記憶では、2021年とか2022年くらいには「効果がない」ということで決着がついていた、と思うのだが。また、点滴薬としてベルクリー(レムデシビル)、内服薬も2023.10月なら、パキロビットパック、ラゲブリオ、ゾコーパと出そろっていたころだ。今から半年ほど前だろ?なぜこの時期になって「イベルメクチン」??というのが私の大きな疑問である。
記事では、「新型コロナウイルス感染症に効果があると考えて投与した」とあるが、投与を「決定した」のはいったい誰なのだろうか?記事になっている2つの施設、そこに医療が介入した様子はなさそうである。
また、記事では、
「職員も入居者も感染する大パニックだった。入居者の生命を守れるとわらにもすがる思いで実行した」
とあるが、2023.10月なら、もうCOVID-19は5類感染症で、一般の医療機関でも対応が可能、訪問診療/往診を行なっている医療機関も「COVID-19が流行しているから往診を行なわない」なんてことは言わなくなった時期である。
「職員も入居者も感染する大パニックだった」とのことだが、COVID-19の特性から考えて、職員も入居者も感染するのが当たり前である。市中感染の流行期には、小さな病院の外来で、1日に10人近くの陽性患者さんが出るのだ。日常生活を送っている職員がかからないわけがない。2020年~2022年のように「感染者が出たら保健所に報告して…」などという時期ではもうなかったはずなのだが。
施設内で流行が起きれば、施設と連携している医師がおそらくいるだろう。その医師に感染対策の相談を行ない、エビデンスのある適切な薬を処方すればよいのであって、「効果がない」「有害である」とされている「イベルメクチン」をわざわざ内服させる意味がない(実は同時期に、「疥癬」が流行していたのかもしれないが?)。
非常に穿った見方かもしれないが、このイベルメクチン、議員曰く
「イベルメクチンは自分と家族が飲むために医者の友人から譲ってもらい、個人事務所に保管していた」
とのことなので、有効期限の切れかけたイベルメクチンを入所者やスタッフに飲ませ、薬代を徴収していたのかもしれない。だとしたら極めて悪質だ。
まず、「イベルメクチンは自分と家族が飲むために医者の友人から譲ってもらい」とくだりが間違っている。医師法には、「無診察の投薬」は禁止と規定されている。医師法に規定されているので、保険診療であろうが自由診療であろうが関係ない。「医師の友人が薬を譲る」という行為そのものが医師法違反である。
「医師の診察なく薬を飲ませた」ということは大きな問題であるが、2023年の10月にこのようなことが起きた、ということを考えると、その背後にさらに深い闇が隠れているのではないか、と心の薄汚れた私は思ってしまうのである。
別のニュースでは、同施設で職員19人のうち16人が退職したそうだ。
そういう点でも、「闇」がありそうである。
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