第773話 そういう事か…。しかしすごいな。(772話『解せぬ…』の続き)

日は改まって、2/10 Yahooニュースを見ていると、「医誠会病院(現 医誠会国際総合病院)」のある大阪ではなく、「忠臣蔵」や「塩」で有名な、岡山寄りの兵庫県にある赤穂市の地域新聞である「赤穂民報」に、772話で取り上げた話の詳細が載っていた。


1年ほど前か、もう少し前だか、一部のネット上、そして医者の世界で大きな衝撃を与えた漫画がupされた。題名は忘れてしまったが、とある脳神経外科医の行状を詳らかにするようなものだった。もちろん作品中では、その出来事が起きた地域も何もかもが伏せられていたのだが、「舞台は赤穂市ではないか?」「その医師は医誠会病院の救急部で働いているのではないか?」という噂がまことしやかに飛び交っていた。


2/10に「赤穂民報」で報道された内容を読めば、その噂だけでなく、今回の経緯などについてもかなり詳細に記載されており、昨日書いた『解せぬ…』というところの多くが明確になったと同時に、私の穿った見方もはっきり認識できた。なので、少し772話は変更している。


ソースは「赤穂民報」2/10付け Yahooニュースより


<以下引用>

 クリニックからは患者が透析を必要としている旨がファクスで送られていたにも関わらず、初期対応した同医師は「どういう適応で入院との判断となったかは不明」などとカルテに記載。患者は翌日になっても透析治療を受けられず容態が悪化し、本人が望んでいなかった延命措置を施された上で「窒息による低酸素脳症」で11日に死亡した。


<中略>


遺族によると、患者の入院後、長女が看護師に病状説明を求めたが「救急医は救急対応で忙しいため話せない」などとして説明対応や医師との面談を拒否され、入院3日目の9日夜に患者が心拍停止の状態で発見された後に病院から呼び出された。また、その後の病院との話し合いの中で院長は、患者を受け入れてから容態が急変するまでの間、一度も「医師の診察はなかった」と認めたという。


<中略>


長女は現職の看護師で「父がなぜこのような亡くなり方になってしまったのか不審に思って確認する中で、最初に対応した救急医が赤穂市民病院でいくつもの医療事故に関わった医師だと知った」という。被告病院のあまりの杜撰さに医療従事者としてこのままではいけないという強い思いから訴訟提起を決意した。


<中略>


 同医師は2019年7月から赤穂市民病院に脳神経外科医として在籍。医療過誤1件を含む8件の医療事故を起こしたとされ、当時の院長から手術禁止を命じられたまま依願退職し、その翌日に医誠会病院に救急医として採用された。関係者によると、現在は別の医療法人が運営する大阪府内の医療機関で勤務しているという。


<引用ここまで>


事件の起きた「大阪」ではなく、「赤穂」の地で記事になっている、という点で、この医師が「赤穂」という街にどれほどのダメージを残したのかが分かろう、というものだ。MBSの報道で、示談交渉の際に「透析の引継ぎ」については「注意義務違反」を認めた、とあったのだが、それもよくわかった。


「肺水腫による窒息→心肺停止」という流れについては、医学的に正しい解釈なのか、という点については、それでも一考の余地はあると思われる。入院後の水分管理がどうなっていたのか、という事も考えるべきであるし、「透析を行なわなければ、体内の電解質バランスも崩れる」わけである。また、COVID-19肺炎の陰影、あるいは感染による肺胞のダメージが大きい場合にはDAD(Diffuse Alveorar Damage:びまん性肺胞損傷)の状態となり、そうなれば肺水腫との鑑別は、画像では困難となる。という点で、入院3日目の時点での「心肺停止」の原因は明確とはなりにくい。心肺停止の原因としては、低酸素だけでなく、電解質異常も考慮する必要があるからだ。DADならば透析をしても肺水腫は改善しない。


しかしながら、少なくとも、内科に転科したわけではなく、救急科が管理している、という時点でそれなりに重症だったのでは、と推測される。そのような状態の患者さんを3日間も診察しない、という事はあり得ない。


記事には「本人の望んでいなかった延命治療」という記載があるので、ご本人は自身の明確な意思を持って、いわゆるDNAR(Do Not Attempt Resuuscination:蘇生処置をしないこと)を選択しておられたのだろう。「適切」と思われる治療を受けて、それで命が持たないのなら、それはそれでしょうがない、とお考えだったのだろうと思われる。


透析ができない、あるいは透析をしない、という判断をしたなら、その根拠を明確にして、ご家族にお伝えしていれば、おそらくこのようなトラブルにはならなかったのではないかと思われる。


という点で、「3日間診察されずにいたこと」「家族への病状説明から3日間逃げていたこと」が最も大きな問題だと思われる。もちろん透析可能な全身状態だったにもかかわらず、透析を受けることができなかった、という事であれば、それも非常に大きな問題である。


772話では医療者側に寄った文章ではあったが、この報道を見て、認識を改めた。大切な家族をそのようにぞんざいに扱われた挙句、「蘇生処置不要」という意思表示はないがしろにされて、命を終えてしまった、となれば、ご家族の怒りはごもっともである。


賠償金額のことについてもおそらく「懲罰的請求」なのであろう。怒りの強さが伝わってくる。


そして、このような詳細な情報が、「赤穂市」のローカル新聞から出てくる、という事に大きな意味があろうと思われる。


次に続く

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