第758話 原作者の意向より視聴率(お金)が大事か!
大変悲しい事件が起きた。日本テレビがドラマ化した「セクシー田中さん」、漫画の原作者である芦原 妃名子先生が、この作品のドラマ化にかかわるトラブルが原因なのか、自ら命を絶たれてしまった。原作も未完となってしまった。
SNS上で脚本家が出したメッセージに対して、原作者である芦原先生が、ドラマ化を行なうにあたっての条件を、出版社側を通じてテレビ局側に通知し、了解の上でプロジェクトが始まったにもかかわらず、当初の条件を反故にされるようなことが幾度も続いた、などと、経緯を詳細にSNS上にアップした。
先生の投稿が反響を呼び、先生ご自身が当該投稿を削除の上、「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」とSNSに書き込まれたのが、最後の投稿となった。
1/28より行方不明となられ、本日亡くなられているのが発見されたそうだ。
先の長文の投稿では、この作品で伝えたかったこと、大切にしたかったことが挙げられており、いずれも極めて微妙で繊細な問題であった。おそらく原作漫画では、本当に丁寧に、気を使って作品にされたものだろうと思われる。作品に込められた作者のメッセージをスルーし、「視聴率を稼げる」エンタメ作品に改編しようとした脚本家、テレビ局側と原作者はギリギリの戦いをしたのだろうと思われる。
脚本家は、「原作クラッシャー」と評価されていた方らしい。これまでの漫画作品の実写化でも、原作ファンの方からはかなり不評を買っていたようだ。
表に出ていることはごく一部で、様々な葛藤が先生の中にはあったのだろう。それゆえ、長文のメッセージとなってしまったのだろう。また、それが先生の予想を超えた反響をもたらしたことで、却って先生を苦しめてしまったのだろう。
最後の投稿「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」の言葉をかみしめなければならない。先生は、ただ経緯を、真実を知ってほしかっただけなのだろうと思う。テレビ局や脚本家を責めるために書いた文章ではなかったのだろう。だから、その文章が「バッシング」のきっかけとなってしまったことを心から後悔したのではないだろうか?
書かれた内容を見ると、明らかに原作者の要望を無視し続けたドラマ制作サイドに非があることは分かる。それでも、「バッシング」という悪意をその人たちに向かわせてしまったことを後悔しておられたのだろう。とても心優しい方だと思う。
先生のご冥福を心の底からお祈りする。と同時に、この問題だけではなく、取材態度などで、テレビ局、新聞社などのマスコミの傲慢さは何度も問題視されていることである。
「社会の公器」を自認しているのであれば、まず自らの姿勢を問うべきではないか?たくさんのやり取りが制作サイドと原作者の間で交わされていたはずである。その経緯を詳細に検証し、明らかにすべきではないか、と思う。短い、心のこもらない追悼のコメントよりも、そちらに注力した方がよいのではないか、と思った次第である。
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