第747話 ビール1Lとコーラ1L、どちらが体に悪いだろうか?(市医師会地区会への参加 2)

司会の先生が開会のあいさつをされ、市医師会長の挨拶、医師会の各理事が、それぞれ担当されている業務についての進捗状況、問題点などを報告された。理事を担当されている多くの先生が、それぞれ別の業務についてお話をされていることを聞くと、医師会が「単なる利益誘導団体」ではなく、「地域の医療」の提供について責任をもって動いていることがよくわかる。


各理事からの報告が終わると、質疑応答に移った。やおら院長先生が手を挙げられた。質問は、「マイナ保険証への強制的な移行」に対する医師会の姿勢について、のことだった。


いろいろとトラブルを抱えながらも、本年の10月には現行の保険証が廃止され、マイナンバーカードと保険証がリンクされることが決定した。時代の趨勢とはいえ、いくつもの問題を抱えているのも事実である。何より気に食わないのは、「マイナンバーカード」にかかわるいかなる問題についても「デジタル庁は責任を問われない」と法的に規定されていることである。


制度を中途半端に作って、政策をごり押しして、トラブルが起きても、それを管理する「デジタル庁」は常に「責任を問われない」なんておかしなことはない。無茶苦茶である。デジタル庁が発足し、様々な施策を打ち出し法制化する中で、「デジタル庁の免責」については全く報道もされなかったように記憶している。そのような法律となっていること、その法案を国会で通過させたこと、その最終責任は「国民」にあるわけだが、それにしてもひどい話だと個人的には思っている。


今回の能登大地震について、河野デジタル大臣は「X」で、「マイナ保険証があれば、これまでの服薬歴などが分かるので、ぜひ活用してほしい」と投稿していたそうだが、本当にそれを必要としている地域は、電気、通信網というインフラそのものが破壊されており、実際問題として、最も必要としている地域で「マイナ保険証」が使えない事態になっていること、当然、河野大臣の「X」への投稿にアクセスできないこと、そしてそのことを指摘した人を河野大臣がブロックしたことなどが報道されていたと記憶している。


当院の基本システムは紙カルテベースなので、時代遅れではあるが、停電しても、各種検査は行えないものの、定期処方などは問題なく行える。病歴と身体所見だけで医療活動を行なうことが可能であり、そういう点では、古典的であるがゆえに、安全性が確保されている面もあるのである。


閑話休題。院長先生は、学生運動華やかなりしころの、学生運動の「闘士」であったため、「国家権力の横暴」ということについては非常に感度の高い先生である。私が医学生だったころの教授の先生方も、同様に若いころは「ワーワー」としていたそうで、授業の合間に、半ば自嘲的に「学生時代、厳しく批判をしていた『大学教授』という立場に、今自分がついていることについて、考えてみると変な感じがする」とおっしゃられていたように記憶している。


さて、院長先生の質問に対しては、医師会長は「現在の日本医師会として、『医療の世界のDX化を進めていく』という立場を取っており、その点では、『マイナ保険証』についても、いろいろな問題点があるのは理解しているが、医師会としては『推進』という立場を取らざるを得ない」と答えておられた。こういったところで、「政治的なもの」がチラチラ見えるのはしょうがないところではあると思われた。


院長先生以外に質問者はおらず、それをもって、「懇話会」は終了。続いて「懇親会」となった。


司会の先生が「では、乾杯のご用意を」と言って、ウェイトレスさんが各テーブルにビール瓶を数本ずつ置いていった。ところが私は車で来ているのでお酒が飲めない。院長先生に「どうですか」と声をかけるが、院長先生は「お酒を飲めない体質」とおっしゃられた。なので、同テーブルのほかの先生方に、ビールを注いで回った。乾杯の時にグラスが空だと不自然なので、一応、院長先生と私のグラスにもビールを少量ずつ注いだ。


「乾杯!」の音頭とともに、周りの先生方とグラスを合わせるが、院長先生は少量、私は口をつけるふりだけをして、飲まなかった。


ウェイトレスさんに


「ウーロン茶いただけますか?」


と尋ねると


「入り口に置いてあります。セルフサービスです」


とのこと。院長先生の分も合わせて、飲み物を取りに行った。メニュー表には「ウーロン茶」の記載があったが、おいてあった飲み物は、焼酎3種類、水割り用の水、ジンジャーエール、コーラだけで、ウーロン茶は置いていなかった。


しょうがないので、水割り用の水を氷を入れたコップ二つに注ぎ、院長先生と私の席に持っていった。


私はずいぶん喉が渇いていたので、すぐに水を飲み干してしまった。次の飲み物をどうしようか?


恥ずかしながら、私は「気の抜けたコーラ」が好きである。子供のころから、強い炭酸飲料は苦手で、今もジュースを飲むときは炭酸の入っていないものを選択するが、それとは別で、コカ・コーラは好きだった。今も好きである。ハンバーガーやピザなど、「アメリカン」なものを食べるときは、基本的に飲み物はコカ・コーラを選んでいる。


多くの人がご存じの通り、コカ・コーラは、1800年代の終わりから1900年代の初めころに、アメリカの薬剤師である「ジョン・ペンバートン博士」がレシピを調合し、当初は薬として発売された。このレシピは非公開で、アメリカにある「コカ・コーラ」社は、このレシピを基に「原液」を作ることを生業としている。アメリカを含めた、全世界の、飲料としての「コカ・コーラ」を製造している会社は、本社から購入した「原液」に所定の割合で糖と水、炭酸を加えて瓶詰をする「ボトリング」の会社である。日本国内も、コカ・コーラを製造している会社は「コカ・コーラボトリング」と名前がついている。


国によって、使用する糖や水が当然異なるので、それぞれの国で、「コカ・コーラ」の味は微妙に異なっているらしい。


閑話休題。そんなわけで「私の飲み物」であるが、「水」は「水割り用」に置いているだけなので、置いている量が少ない。ソフトドリンクは先に述べたとおり、ジンジャーエールとコカ・コーラである。となれば、私にとってはコカ・コーラ一択である。


ということで、懇親会の間、ずっと私はコーラを飲んでいた。小さなコップに氷を入れて、なので1杯がそれほどの量ではないとは思うが、それでも5~6杯ほどは飲んだように思う。コップ1杯で仮に180mlとしても、1L近くは飲んだわけである。


食事を食べ、周りでたくさんお酒を飲んでいる人を見ながら、ふと考えてしまった。


「俺、コーラを1L近く飲んだけど、周りの先生方はビールを1L以上は飲んでいそうだ。ビール1Lとコーラ1L、どちらが身体に悪いのだろうか?」


どちらも身体によいわけではないが、どちらが悪いか、と考えても答えは出しにくい。


お酒を飲んでいない、シラフの頭で、そんなことを考えながらコーラを飲んでいた。


ちなみに、普段はお酒も、清涼飲料水も飲まない。基本は「麦茶」であることを書いておく。


(続く)

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